「旧約聖書がわかる本<対話>でひもとくその世界」を読みました。
柄谷行人の書評で気になった書物ですが、テーマが難しいので、通常であれば敬遠していたところです。購入して読んでみようと思ったのは、「新書」で価格も手ごろなこと、そして、並木浩一と奥泉光の「対話形式」であること、従って僕でもなんとか読めそうと思ったことなどによります。が、そう簡単ではないことに、読み始めてすぐに気が付きました。
旧約聖書とはどんな書物なのか。
その世界はあらかじめ神からの絶対的な答えが用意されているようなものではない。人間はただ神に従うのではないし、そこには〈対話〉がある。問いかけ、働きかける姿勢があれば、驚くほど面白くなってくるテクストなのだ。
旧約聖書研究のプロとその下で学んだ異才の小説家が繰り広げる〈対話〉に誘われ、小説のように自由で、思想書のように挑発的な旧約聖書の本質がほんとうにわかる!
加藤陽子さん(東京大学教授/日本近現代史)推薦!
「あまりの面白さに、ベッドから跳ね起きてメモをとる。神を外部に創造し、人権を基礎づけた旧約聖書の真の姿がグッと身近に迫ってくる。」
「対談という形式は旧約聖書を論じるにふさわしい。なぜなら旧約聖書がきわめて〈対話的〉テクストだからだ。本書の大きな特色として、本文を直接引用して論じている点が挙げられるだろう。テクストを目の前にすることが理解を深めるとともに、読者もまた〈対話〉の場に引き入れられることが目論まれている。
対談はジャズでいえばスタジオセッションのようにして行われたが、いずれも知的興奮に満ちた時間だった。その熱が読者へも間接ながら伝わり、〈対話〉の場へと誘われることを願ってやまない。」
――奥泉 光
内容説明
小説のように自由に批評し、思想書のように挑発する―。旧約聖書とはどんな書物なのか。その世界はあらかじめ神からの絶対的な答えが用意されているようなものではない。人間はただ神に従うのではないし、そこには“対話”がある。問いかけ、働きかける姿勢があれば、驚くほど面白くなってくるテクストなのだ。旧約聖書研究のプロとその下で学んだ異才の小説家が繰り広げる“対話”に誘われ、旧約聖書の世界がほんとうにわかる!
目次
第1部 旧約聖書とその時代(世界を創造する神;旧約聖書はどんな書物なのか ほか)
第2部 創造と、文明批判の伝統(神による世界の維持と文明の抵抗;自己拡張を図る文明と神のリアクション ほか)
第3部 神と人間(行動を考え直す神;人のとりなしに耳を傾ける神 ほか)
第4部 ヨブ記を読む(水準の高いテクスト;序曲 理不尽な苦難と従順なヨブ ほか)
並木浩一:
1935年、神奈川県生まれ。国際基督教大学名誉教授。元・日本旧約学会会長。『並木浩一著作集(全3巻)ヨブ記の全体像/批評としての旧約学/旧約聖書の水脈』『ヨブ記注解』など。
奥泉 光:
1956年山形県生まれ。1986年に『地の鳥 天の魚群』でデビュー。1993年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、1994年『石の来歴』で芥川賞、2009年『神器』で野間文芸賞を受賞。
朝日新聞:2022年11月12日