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國分巧一郎の「目的への抵抗」を読んだ!

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國分巧一郎の「目的への抵抗」(新潮新書:2023年4月20日発行)を読みました。

 

本書の出発点にあるのは口頭で行われた二つの発表である。

一つは、東京大学教養学部主催「東大TV―高校生と大学生のための金曜特別講座」において私が2020年10月2日に行った講義(新型コロナウィルス感染症対策から考える行政権力の問題。オンライン開催)。もう一つは、私が2022年8月1日に自主的に開催した「学期末特別講話」と題する特別授業(「冬普及と民主主義」。対面開催)。どちらのコロナ危機を主題としている。そして両者を隔てる二年間は、ちょうど、コロナ危機が最も強く社会を揺さぶった時期に当たる。これら二つを収めた本書は、私がコロナ危機の訪れとともに考え始めたこと、そしてそれを突き詰めていった挙げ句に考え至ったことの記録になっている。

 

自由は目的に抵抗する。そこにこそ人間の自由がある。にもかかわらず我々は「目的」に縛られ、大切なものを見失いつつあるのではないか――。コロナ危機以降の世界に対して覚えた違和感、その正体に哲学者が迫る。ソクラテスやアガンベン、アーレントらの議論をふまえ、消費と贅沢、自由と目的、行政権力と民主主義の相克などを考察、現代社会における哲学の役割を問う。名著『暇と退屈の倫理学』をより深化させた革新的論考。

 

目次

はじめに――目的に抗する〈自由〉

 

第一部 哲学の役割――コロナ危機と民主主義

コロナ危機と大学、高校/自己紹介/近くにある日常の課題と遠くにある関心事/自分で問いを立てる/ある哲学者の警鐘/アガンベンの問題提起/「例外状態」と「伝染病の発明」/アガンベンという哲学者の保守性/第二の論考/三つの論点(1)――生存のみに価値を置く社会/三つの論点(2)――死者の権利/保守主義/考えることの危険と哲学すること/社会の虻として――哲学者の役割/三つの論点(3)――移動の自由の制限/支配の条件/ルソーの自然状態論/支配の複雑性/移動の自由と刑罰/日本国憲法における移動の自由/政治家と哲学者――メルケルとアガンベン/アンティゴネ、そして見舞うという慈悲/殉教者と教会の役割/行政権力とは何か/行政権が立法権を超える時/二〇世紀最悪の「例外状態」/ヴァイマル期/改めて三権分立について

【質疑応答】
1.移動の制限はある程度仕方がないのでは?/2.日本ではどのような制限を行政権に加えるべきか?/3.なぜ人々は自由に価値を置くことをやめたのか?/4.出発の自由と到着の自由があるのでは?/5.高校生が将来のためにやっておくべきこととは?/6.日本で健全な政治を行うために必要なこととは?/7.警告が届かないのはマスメディアのせい?/8.生存以外の価値を人々は求めているのか?/9.死者の権利とは?/10.テロリズムの脅威は?/11.マスクを着けたくない人々についてどう思いますか?/12.哲学者はどこまでその役割を求められるのか?/13.どうすれば話し相手を増やしていくことができるか?/14.主張を訴えたとして、社会は変わるものなのか?/15.「死者の権利」を生者が語るのは傲慢なことではないか?/16.現代は死生観が昔よりポジティヴになったのか?/17.今日高校生とのやり取りで感じたことは?

 

第二部 不要不急と民主主義――目的、手段、遊び

前口上/日本では炎上しなかったアガンベンの発言/「不要不急」/必要と目的/贅沢とは何か/消費と浪費/消費と資本主義/浪費家ではなくて消費者にさせられる/イギリスの食はなぜまずくなったのか?/目的からはみ出る経験/目的にすべてを還元しようとする社会/目的の概念/目的と手段/チェスのためにチェスをする/すべてが目的のための手段になる/ベンヤミンの暴力論/「目的なき手段」「純粋な手段」/カップ一揆とルール蜂起/ベンヤミンの思考のスタイル/キム少年――再びアーレントについて/無目的の魅力/官僚制と官僚支配/自由な行為とは何か/動機づけや目的を超越すること/遊びについて/パフォーマンス芸術/政治と行政管理/遊びとしての政治とプラトン/社会運動が楽しくてはダメなのか/まとめ

【質疑応答】
1.コロナ危機と自由の関係について/2.責任について

おわりに

 

國分巧一郎:

1974年千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、東京大学大学院総合文化研究科修士課程に入学。博士(学術)。専攻は哲学。現在、東京大学大学院総合文化研究科教授。2017年、『中動態の世界――意志と責任の考古学』(医学書院)で、第16回小林秀雄賞を受賞。主な著書に『暇と退屈の倫理学』(新潮文庫)、『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』(幻冬舎新書)、『スピノザ 読む人の肖像』(岩波新書)など。

 

 


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