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平野千果子の「人種主義の歴史」を読んだ!

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平野千果子の「人種主義の歴史」(岩波新書:2022年5月20日第1摺発行)を読みました。僕にはやや難しかったし、読むのに時間がかかりました。でもいろんなことが解りました。

 

ウィキペディアによると、

人種主義(じんしゅしゅぎ、英語: racism、レイシズム)とは、人種間に根本的な優劣の差異があり、優等人種が列島人種を支配するのは当然であるという思想、イデオロギー。人種主義は、身体的差異と考えられるものに結びついている点でエスノセントリズムとは異なる。

 

私たち自身に潜む

レイシズムを考えるために

 

この本の内容は、

「人種」という根拠無き考えに基づいて、人を差別・排除する。人種主義(レイシズム)は、ナショナリズム、植民地主義、反ユダヤ主義等と結びつき、近代世界に計りしれぬ惨禍をもたらし、ヘイトスピーチや黒人差別など、現代にも深い影を落としている。大航海時代から今日まで、その思想と実態を世界史的視座から捉える入門書。

 

サルトルは「ユダヤ人問題に関する考察」において、ユダヤ人が無前提に存在するのではなく、反ユダヤ主義という思想がユダヤ人を作り出すと指摘している。頻繁に言及される論点だが、これはまさに、人種は所与の存在なのではなく、人種主義が人種を実態化させていると言い換えられる。そしてこれから本書でもみていくように、人種主義はそれぞれの時代で裏付けとなる思想や制度や科学に支えられていくのである。(本書序章)

 

平野は言う。

人種問題とは結局のところ、差別する側/される側双方にとって自他の区別を基とするアイデンティテイの問題ではないかという感を強くする。そしてそのアイデンティテイとは所与の何かではなく、種々の社会構造や環境の中で形成されるものだろう。(終章再生産される人種主義)

 

最後に、第一に日本での問題。アイヌや琉球の人々の遺骨返還問題。第二に部落差別、部落は本来相違のないところに、何らかの基準で違いを持ち込んだ例。部落差別はいわゆる人種主義の問題と捉えられている。そして、ベルギーでの話。「私は人種主義者じゃない。黒人の友達がいるんだ」、「あなたの振る舞いは普通のアメリカ人と違うね」、「あなたはベルギー人だというけど、本当はどこの出身なの?」。日常で耳にしても、何ら問題がないような一言が、実が受け取る側に非差別感や疎外感をもたらしうる。そうした表現は「マイクロアグレッション」と呼ばれている。・・・この問題の困難は、無意識のうちに、場合によってはむしろ善意のうちに、人種主義に加担してしまう場合もあること、しかもそれが日常レベルで起こることではないだろうか。(終章再生産される人種主義)

 

目次

序章 人種主義を問う
第一章 「他者」との遭遇――アメリカ世界からアフリカへ
 第1節 大航海時代
 第2節 ノアの呪い――黒人蔑視の淵源
第二章 啓蒙の時代――平等と不平等の揺らぎ
 第1節 人間を分類する
 第2節 思想家たちと奴隷/奴隷制
第三章 科学と大衆化の一九世紀――可視化される「優劣」
 第1節 人間の探究と言語学
 第2節 人種の理論書
 第3節 優劣を判定する科学
第四章 ナショナリズムの時代――顕在化する差異と差別
 第1節 諸科学の叢生
 第2節 国民国家の形成と人種
 第3節 新らたな視角――黄禍論、イスラーム、反ユダヤ主義
第五章 戦争の二〇世紀に
 第1節 植民地支配とその惨禍
 第2節 ナチズム下の人種政策
 第3節 逆転の位相
終章 再生産される人種主義

 あとがき
 主要参考文献/図版出典一覧

 

平野千果子(ひらの ちかこ)
1958年,東京都生まれ
現在―武蔵大学人文学部教授
専攻―フランス植民地史
著書―『フランス植民地主義の歴史』(人文書院)『フランス植民地主義と歴史認識』(岩波書店)『アフリカを活用する』(人文書院)『新しく学ぶフランス史』(編著,ミネルヴァ書房)『グローバリゼーションと植民地主義』(共著,人文書院)『欧州統合の半世紀と東アジア共同体』(共著,日本経済評論社)『ヨーロッパ史講義』(共著,山川出版社)マルク・ブロック『奇妙な敗北』(翻訳,岩波書店) ほか


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