宮城県美術館で「フェルメールからのラブレター展」を 観てきました。行ったのは11月21日、会期中休館はないとの情報があり、月曜日に行ってきました。12月23日から東京でもBunkamuraザ・ミュージアムで開催されるのですが、Bunkamuraでは混みそうなので、仙台で先に観ることにしました。それにしてもフェルメールの作品が3点も同時に出されるという、しかもワシントン・ナショナル・ギャラリー、アイルランド・ナショナル・ギャラリー、そしてアムステルダム国立美術館という、3点の所蔵先がそれぞれ異なるという、これは画期的なことです。
副題には「コミュニケーション:17世紀オランダ絵画から読み解く人々のメッセージ」とあり、Bunkamuraのチラシには、それに加えて「フェルメールと同時代のオランダ室内画展」とあります。Bunkamuraザ・ミュージアムで今年の3月に開催された「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」では、フェルメールの作品がたった1点だけだったので、大いに失望しました。
今回の展覧会は、メインテーマはコミュニケーション、オランダ風俗画で重要な役割を果たした手紙をはじめとするコミュニケーションをめぐる絵画作品を、4つのテーマに沿って構成してありました。展覧会の構成は、以下の通りです。
1 人々のやりとり―しぐさ、視線、表情
2 家族の絆、家族の空間
3 職業上の、あるいは学術的コミュニケーション
4 手紙を通したコミュニケーション
1974年に国立西洋美術館で開催された「ヨーロッパ絵画名作展」、2005年同じく国立西洋美術館で開催された「ドレスデン美術館展 世界を映す鏡」に出されたフェルメールの「窓辺で手紙を読む女」(ドレスデン国立美術館)、最近、この作品がずっと気になっていました。整然とした構図、鮮やかな色彩、左側の窓の扱い、光の拡散と反射、等々、フェルメールの「スタイル」がこの作品で確立したとも言えます。
フェルメールの数少ない作品の中で、「手紙」を主題にした作品がけっこうあるという。手紙を読む、書く、受け取る、送る、口述する、という、オランダで手紙のやりとりが急増した時期、風俗画の一つのジャンルになったと言われています。そう言えば、フェルメールの作品は、女性単身像を描いたものがほとんどでした。
今回出されていたフェルメールの作品3点、「手紙を書く女」1665年頃、(ワシントン・ナショナル・ギャラリー)、「手紙を書く女と召使い」1670年頃、(アイルランド・ナショナル・ギャラリー)、「手紙を読む青衣の女」1663-64年頃、(アムステルダム国立美術館)、どれが好きか嫌いかは別にして、それぞれ特徴があります。
「手紙を書く女」は、上流生活を描いた風俗画、女性の表情は自然で、微かに微笑んでいるように見えます。黄色いモーニング・コートが印象的です。テーブルに置かれている真珠のネックレスや宝石箱が上流生活の存在感を示しています。光はどこから入ってくるのか、窓は見えません。彼女そのものが光を発しています。「手紙を書く女と召使い」は、一心不乱に手紙を書く女性を描いています。定番の左側の窓から光が差し込みます。なぜか画面の中央に召し使い、微笑しているのはなにを思っているのか、気になります。お互いが、それぞれ独自の世界に入り込んでいます。
「手紙を読む青衣の女」、この作品は上流生活をあらわす豪華なものはほとんど描かれていません。着ているものもルーズな上着で、腰の辺りがかなり膨らんでいるので、女性が妊娠しているかしていないのか、議論もあるようです。「窓辺で手紙を読む女」と構図はよく似ていますが、しかし「青衣の女」は光は左から入ってくるが窓がないことで、どこか質の違った印象を受けます。たぶん、女性が手紙に集中していることを表現しているのでしょう。朽木ゆり子は、「青衣の女」はフェルメールの頂点ともいわれる室内の女性単身像の一枚、「真珠の首飾り」とともに最高傑作の呼び声が高い、と書いています。
フェルメールの師は誰であったのか、大きな議論になっているようですが、これも謎に包まれていて、定説がないようです。フェルメールは誰から学んだのか。風俗画、ということでは、ピーテル・ホーホ、ヘラルト・テル・ボルフ、ヤン・ステーンら、先行する画家たちがいて、フェルメールはそこから多くを学んでいます。
1 人々のやりとり―しぐさ、視線、表情
2 家族の絆、家族の空間
3 職業上の、あるいは学術的コミュニケーション
4 手紙を通したコミュニケーション
フェルメールの作品3点
「フェルメールからのラブレター展」
宮城県美術館の開館30周年記念展として、世界に30数点しか存在しないオランダ17世紀絵画の巨匠ユハネス・フェルメールの作品が3点一挙に公開されます。本展のメインテーマは、コミュニケーション。オランダ風俗画で重要な役割を果たした手紙をはじめとするコミュニケーションをめぐる絵画作品を、4つのテーマに沿って構成します。本展では、ヨハネス・フェルメールのほか、ピーテル・ホーホ、ヘラルト・テル・ボルフ、ヤン・ステーンら計27人の作品、世界の18の美術館、機関、個人から出品される約40点を展示します。フェルメール作品のなかでも日本初公開の「手紙を読む青衣の女」は、このたび入念な修復を終えて、本来の美しさをよみがえらせ、本国に先駆けて世界で初公開されます。
図録
監修:千足伸行
編集:博報堂DYメディアパートナーズ
京都市美術館
宮城県美術館
Bunkamuraザ・ミュージアム
発行:朝日放送
テレビ朝日
博報堂DYメディアパートナーズ
チラシ
2011年12月23日(金・祝)
~2012年3月14日(水)
Bunkamuraザ・ミュージアム
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