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浅田次郎の「母の待つ里」を読んだ!

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浅田次郎の「母の待つ里」(新潮社:2022年1月25日発行)を読みました。

 

直接的には下にのせた朝日新聞の読書欄に載った「『嘘の故郷』で救済される魂」です。浅田次郎は初期の作品は数冊読みましたが、ある時から一切読まなくなりました。早い話があまりにも通俗な小説だからです。通俗だから嫌だと言ってるわけではなく、なぜかシンパシーを感じなくなってしまったからです。それは作者の浅田次郎の問題ではなく、読む方の問題とも言えますが。

 

生まれ育った場所だけが「ふるさと」ですか? 

現代人に本当の幸せを問う、著者最高傑作!

上京して四十年、一度も帰ろうとしなかった郷里で私を温かく迎えてくれたのは、名前も知らない〈母〉でした――。家庭も故郷も持たない人々の元に舞い込んだ〈理想のふるさと〉への招待。半信半疑で向かった先には奇跡の出会いが待っていた。雪のように降り積もる感動、全く新しい家族小説にして永遠の名作誕生!

 

あらすじ:

男は東北のとある駅に降り立った。大手食品会社の社長として東京で多忙な日々を過ごす彼は、上京して以来、じつに40数年ぶりに故郷を目指すのだ。
実家ではすっかり腰の曲がった86歳の母・ちよが、彼の親不孝を責めもせず、温かく迎えてくれた。父亡きあと一人で家を守ってきた母は、囲炉裏端に心づくしの手料理を並べ、薪で風呂を沸かし、寝物語に神隠しにあった村の娘の話を聞かせてくれた。「母は、自分の息子も神隠しにあって帰ってこないのだと考えて自らを納得させていたのだろうか」。布団の中で男はこれまでの人生を振り返る……。
しかし、彼はこの慈愛に満ちた〈母〉が本当は誰なのかを知らない。ただ、ここが「ふるさと」であることだけは知っている――。物語は〈母〉のもとに足を運ぶ還暦世代の男女3人の視点で進んでいく。彼らをそこへ導いたものは? そして帰る場所を持たない彼らが見つける「ふるさと」とは?それぞれの家庭、仕事、来し方、迷いや疑いをリアルに、時にユーモラスに綴りながら、次なる人生の道しるべを見出していく姿を描く。

 

目次

1 松永徹氏の場合
2 室田精一氏の場合
3 親友の忠告
4 妹の助言
5 古賀夏生博士の場合
6 花筏
7 憂鬱な月曜日
8 青梅雨
9 蛍
10 無為徒食
11 神の立つ日
12 満月の夜
13 返り花
14 忘れ雪

 

メッセージ

都会に生まれ育った私にはふるさとがありません。家はビルの谷間に沈み、風景は様変わりし、幼なじみもちりじりになってしまいました。このごろになって、その事実がとても虚しく寂しく思えます。そしてもうひとつ、人間は豊かな自然とともに生きてこそ幸福なのだと知りました。だとすると、現代社会は自然から不自然へと急速に傾斜しているのではないかと思うのです。「母の待つ里」はそうした疑惑のノベライズです。

浅田次郎

 

 

浅田次郎:

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄(メトロ)に乗って』で第16回吉川英治文学新人賞を受賞。以降、『鉄道員(ぽっぽや)』で1997年に第117回直木賞、2000年『壬生義士伝』で第13回柴田錬三郎賞、2006年『お腹(はら)召しませ』で第1回中央公論文芸賞・第10回司馬遼太郎賞、2008年『中原の虹』で第42回吉川英治文学賞、2010年『終わらざる夏』で第64回毎日出版文化賞、2016年『帰郷』で第43回大佛次郎賞を受賞するなど数々の文学賞に輝く。また旺盛な執筆活動とその功績により、2015年に紫綬褒章を受章、2019年に第67回菊池寛賞を受賞している。他の著書に『プリズンホテル』『天切り松 闇がたり』『蒼穹の昴』のシリーズや『憑神』『赤猫異聞』『一路』『神坐す山の物語』『ブラック オア ホワイト』『わが心のジェニファー』『おもかげ』『長く高い壁 The Great Wall』『大名倒産』『流人道中記』など多数。2011年から6年にわたり、第16代日本ペンクラブ会長も務めている。

 

朝日新聞:2022年3月19日


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