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サントリー美術館で「悠久の光彩 東洋陶磁の美」展を観た!

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サントリー美術館で、大阪市立東洋陶磁美術館コレクション「悠久の光彩 東洋陶磁の美」展を観てきました。大阪市立東洋陶磁美術館へは、以前から一度観に行きたいと思っていた美術館で、旧安宅コレクションを母体に発足した美術館です。大阪市立東洋陶磁美術館は、2011年12月26日(月)~2012年4月6日(金)の間、空調・照明等の設備工事のため休館しているので、その間、東洋陶磁美術館のコレクションをサントリー美術館で観られるというわけです。観に行ったのは2月17日でした。サントリー美術館は火曜日が休館日なのですが、間違えて14日の火曜日に行ってしまい、恥ずかしながらすごすごと引き揚げました。


東洋陶磁については、松岡美術館や出光美術館、あるいは静嘉堂文庫美術館などで、何度か観ていますが、正直言って詳しいことはよくわかりません。その時々で、解説を読んでは納得するのですが、あまりにも範囲が広いというか、奥が深いというか、わからないことが多すぎます。たまたま大阪市立東洋陶磁美術館のホームページを除いたら、「陶磁入門 」として、鑑賞の手引きが7項目にわたって詳細な解説がありました。1.やきものとは2.成形方法3.器形のいろいろ4.さまざまな装飾方法5.釉薬の成り立ちとやきものの色6.焼成方法と窯の種類7.さまざまな文様。これは東洋陶磁の初心者にとって、大いに役立つかもしれません。

先日の上海旅行で、「上海博物館」を観ることができました。さすがは本場、新石器時代から清朝(1616-1912)まで、中国陶磁器8000年の多岐多様な歴史の、精選された500点あまりの中国陶磁が展示されていました。今回の展覧会「悠久の光彩 東洋陶磁の美」展は、大きく「中国陶磁の美」と「韓国陶磁の美」に分かれていました。「中国陶磁の美」は、66件の中国陶磁に日本陶磁3件を加え、国宝2件、重要文化財11件、計69件が出されていました。「韓国陶磁の美」は、12世紀(高麗時代)から19世紀(朝鮮時代)に至る作品65件、それに2件の日本陶磁を加え、計67件が展示されていました。徳に青磁の青や白磁の白、五彩など、色ごとに分けて、わかりやすく紹介されています。


やはり圧巻は今回の目玉、国宝「油滴天目茶碗」と、重要文化財「木葉天目茶碗」でしょう。ついついそちらに目がいってしまいます。矢部良明著「すぐわかる名品 茶碗の見かた」(東京美術:2004年6月1日初版第1刷発行)には、最初に「天目」について詳しく書かれています。「天目とは、中国製の黒釉茶碗を日本で呼び習わした名称。スッポン口に小さな高台という特徴のある天目形をなし、鉄質の黒釉が掛かっている。室町時代の茶人は、格式の高い天目を好み、桃山時代まで喫茶用として常用された」、とあり、「曜変天目(稲葉天目)」、「油滴天目」、「禾目天目」、「文字天目」、「木葉天目」と、それぞれに解説しています。


国宝「油滴天目茶碗」は、建窯(福建省)、南宋時代のもので、やきものの中でも名品中の名品とされ、関白豊臣秀次らも珍重したといわれている器です。朝日新聞は「つややかな黒の中に、うわぐすりの結晶が、まるで水面に浮かぶ油滴のように輝く。・・・光をあてるほど、無数の斑文が金や銀、紺色など輝きを増す」と、見事に解説しています。「木葉天目茶碗」は、吉州窯(江西省)、南宋時代のもので、金沢前田家伝来品の名品で、重要文化財に指定されています。図録には「小さい底面から直線的に一気に広がる敞口形の碗で、漆黒の黒釉の中に、一枚の木の葉が黄土色に葉脈の細部まで鮮明に焼き付けられています。木の葉の隣には二個並んだ五弁花文のような痕跡が見えます」、とあります。日本の喫茶趣味が「唐物茶碗」をこよなく珍重したということでしょう。


まず展示室に入って驚いたのは、正面に展示されていた「加彩婦女俑」でした。先日上海博物館で観た「陶仕女彩絵俑」(唐、公元618-907年)と、顔の向きこそ違え、色といい、形といい、まったく同じでした。図録には、「頬に初々しさの残る若い女性の立像で、左足にゆったりと体重を乗せ右足を投げ出すようにしています。首を左に傾け、胸前にかかげた手元の奥からもの思いに耽るようにこちらを見つめるようすは、全体として緩やかなS字を形成し、同時期に制作された加彩俑の中出も抜群に優れています」と絶賛しています。


もう一つの国宝、「飛青磁花生」は龍泉窯、元時代のもので、図録には「玉壺春形の青磁瓶で、薄い端反りの口縁から首、胴裾にかけての優雅なS字曲線が造り出す完璧な左右対称のプロポーションに圧倒されます。高台畳付を除き前面に厚く施釉され、・・・口縁の三方に等間隔に鉄斑が擱かれています」とあります。そして「鴻池家に伝来した品で、元時代に至って龍泉窯が到達した最高水準の青磁を代表する作品」と絶賛しています。


それにしても今回の展示品、辰年なので「龍」の絵柄が多いのは当然としても、なぜか「牡丹」を描いたものが多かったのには驚きました。画像は載せていないが、例えば、景徳鎮窯の「青花龍波濤文扁壺」、「荒れ狂う波濤が一面に描かれる中、大胆にも三爪龍の姿は白抜きになっています。顔や鱗などの細部はすべて刻線によってあらわし、唯一、眼にのみ青を点じています」とあります。また例えば、景徳鎮窯の「瑠璃地白花牡丹文盤」、「地に瑠璃釉を塗、意匠部分を白抜きにする技法で、見込中心に牡丹文を、周囲に桃、杏、柘榴、枇杷、茘枝、柿の六果文を、外側面に宝相華唐草文をあらわします」とあります。


形の面白いものとしては、韓国陶磁の方が多く出ていたように思います。例えば「青磁陽刻牡丹蓮花文鶴首瓶」、牡丹が描かれていることもありますが、八角に面取りした長い頸部が立ち上がる形状は、9世紀の中国の越窯青磁に例があるというが、それにしても極度に長く細い頸部は上へ伸びるに従ってわずかにねじtれているから、実に面白い。例えば水注2つ、高麗時代の「青磁陽刻筍形水注」は、太い筍を水注の身に見立て、細竹を切って作ったような把手と注口が付き、筍の頭頂を真横に小さく切り、蓋にしています。やはり高麗時代の「青磁象嵌童子海石榴華文水注」は、文様の背景を掘り下げて白色の土を象嵌し、さらに文様の輪郭線には黒土を象嵌した逆象嵌の水注です。把手の根本には蓮葉形の装飾が付いています。「粉青鉄蓮池鳥魚文俵壺」も、面白い形をしています。


ひとつだけ、他にはほとんどみられない、見事にカラフルな「盤」がありました。それは、景徳鎮窯の「五彩牡丹文盤」です。直径40cm近い大皿で、見込に大きな4個の花をつける牡丹文を充填し、その周囲に瑞果文を連ねています。五彩のそれぞれ澄んだ青花、赤、黄、緑に褐色の調和がカラフルで心地良い色合いです。まるで柿右衛門かと思わせる色合いです。


今でも中国では、毎年新たな重大考古発見があり、中国陶磁の研究はめまぐるしいスピードで展開しているという。さらに北京の故宮博物院や上海博物館などが実施している陶磁器の化学分析も長足の進歩をしているという。今回の「悠久の光彩 東洋陶磁の美」展、期待以上に素晴らしいものが出ていましたが、やはり中国陶磁の方が見るべきものが多かったような気がしました。 そうそう、アートブロガーの大御所Toraさんが、「外国製のものを国宝にする基準は何なのだろうか」、という疑問を出していましたが、たしかに僕も同様の疑問を持ちました。

中国陶磁の美

1-2世紀頃(後漢時代)から17世紀(明時代)の中国陶磁の流れを、その豊かな色の展開をキーワードに、3件の日本陶磁をまじえながらたどります。国宝2件、重要文化財11件をはじめ、合計69件の名品が勢揃いします。









韓国陶磁の美

大阪市立東洋陶磁美術館の韓国陶磁コレクションは、質の高さを誇ると同時に、高麗時代から朝鮮時代にかけて次々と出現した陶磁器の多彩な技法・様式をほぼ網羅しており、研究対象としてもきわめて充実していることで知られています。本章では、同館の韓国陶磁コレクションのうち12世紀(高麗時代)から19世紀(朝鮮時代)に至る作品65件を厳選、2件の日本陶磁を加え、その展開をたどります。







大阪市立東洋陶磁美術館コレクション

「悠久の光彩 東洋陶磁の美」

大阪市立東洋陶磁美術館は、住友グループ21社から国宝2件、重要文化財12件を含む「安宅コレクション東洋陶磁」寄贈の申し出を受けて大阪市が建設したもので、1982年11月に開館しました。以来、中国・韓国の陶磁器を中心に、多くの個人コレクターからの寄贈作品が加わり、現在では収蔵品の質・量ともに国内随一を誇ります。本展では、2012年に開館30周年を迎える大阪市立東洋陶磁美術館の収蔵品約4,000件から、 国宝2件、重要文化財13件のすべてを含む東洋陶磁の名品約140件を厳選してご紹介します。中国陶磁と韓国陶磁は、日本人になじみの深い海外古陶磁の代表格であり、長きにわたって日本陶磁が大きく影響を受けてきたことは言うまでもありません。日本の古陶磁愛好者は陶磁器の姿に時として人格や精神性をも見出すほど惚れ込んだのでした。誰もが知る名品から久々の公開となる逸品まで、東洋陶磁の美をあらためて発見することができるでしょう。


「サントリー美術館」


「大阪市立東洋陶磁美術館」


とんとん・にっき-touzuro 大阪市立東洋陶磁美術館コレクション

「悠久の光彩 東洋陶磁の美」展

図録

編集:安河内幸絵・土田ルリ子・佐々木康之

    (サントリー美術館)

発行:サントリー美術館






とんとん・にっき-meihin 「すぐわかる 名品 茶碗の見かた」

2004年6月1日初版第1刷発行

著者:矢部良明
編集:株式会社桂樹社グループ

発行所:株式会社東京美術









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