山極寿一の「京大学長、ゴリラから生き方を学ぶ」(朝日文庫:2020年5月30日第1刷発行、2020年12月30日第2刷発行)を読みました。
この本を読む直接のきっかけは、山極寿一×小川洋子の「ゴリラの森、言葉の海」を読んだことによります。
本のカバー裏には、以下のようにあります。
アフリカでゴリラ研究を重ね、総長の仕事は「猛獣使いだ」という人類学者の京都大学総長が、グローバル時代を生き抜く力の磨き方を語る。「精神的な孤独が、自信につながる」「他人の目が“自分”をつくる」「信頼は時間によって紡がれる」など、知的でちょっと泥臭い人生論。
「はじめに」のはじめには、こうあります。
「おもろいことをやりましょう!」
2014年10月に京都大学の総長に就任したとき、これをキャッチフレーズにしました。「おもろい」という発想は、簡単に言ってしまえば、自分だけが面白がるのではなく、創造的な発想を練って相手に「それ、おもろいな」と興味を持たせるように伝える、言ってみれば「対人力を鍛えながら独創力を磨く」ようなことです。
目次
はじめに
第1章 「おもろい」という発想
大学はジャングルだ!
京都の「おもろい」という思想
アートの発想で垣根を越える
「外力」をうまく使う京都の人々
第2章 考えさせて「自信」を育てる
京大自然人類学教室の「子捨て主義」
現場が学校
There is no problem. There is a solution.
味方をつくるより、太刀をつくらない
遠回りに見えて、実は近道かもしれない
困難を極めるゴリラの「人付け」
自信のつけ方・・・精神的孤独のすすめ
第3章 相手の立場に立って「信頼」が生まれる
国が違えば「信頼」の在り方も違う
信頼は「時間」によって紡がれる
「加害者」より「被害者」になりなさい
自分に期待されることを汲み取る
地元語は相手の本音を引き出す魔法のツエ
そそのかして、共謀幻想が持てて・・・相手が動く
あなたのメンツも、私の立場も傷つけない
第4章 「共にいる」関係を実らせてこそ幸福感
「他人の時間」を生きてみる
「時間」を切断してしまう”文明の利器”
生命体の時間は積み重なっていくもの
ニホンザルとゴリラの目の合わせ方
食事や会話は、対面を持続させる
言葉の意味を超えたコミュニケーション
言葉より「構え」を磨け
ゴシップが道徳をつくった
機械とでなく生きたものと付き合うこと
「共にいる」幸福感を疎外するのは「所有」
第5章 「分かち合って」食べる、飲む
食事は「平和の宣言」
酒は「ケ」から「ハレ」へのスイッチ
同調するなら、酒を飲め
食卓の戦争は和解の訓練?
言いたいことが言える横並び
第6章 やりたいことで「貫く」
過去の自分に影響を受ける今の自分
ゴリラの森が生き延びた
ステータスにとらわれず、自分のやりたいことを突き詰めろ
武器は使わず人を動かせ
人は変われる
豪華な世界と出会うために
おわりに
山極寿一:
1952年東京都生まれ。霊長類学者・人類学者、京都大学総長。京都大学理学部卒業、同大学院理学研究科博士後期課程単位取得退学。理学博士。ゴリラを主たる研究対象にして人類の起源をさぐる。ルワンダ・カリソケ研究センター客員研究員、日本モンキーセンターリサーチフェロー、京大霊長類研究所助手、京大大学院理学研究科助教授、同教授を経て、2014年10月から京大総長。17年6月から19年6月まで国立大学協会会長、17年10月から日本学術会議会長を兼任。著書多数。
「ゴリラの森、言葉の海」
新潮文庫
令和3年11月1日発行
著者:山極寿一×小川洋子
発行所:株式会社新潮社