アマゾンに注文しておいた「フェルメールへの招待」(朝日新聞出版:2012年2月29日第1刷発行)が届いたので、さっそく読んでみました。フェルメール作品を全点踏破し、フェルメールに関してはなんでもござれのアートブロガー、「弐代目・青い日記帳」
のTakさんが編集・執筆に関わったという、いま話題の本です。表紙は言わずとしれた「真珠の耳飾りの少女」です。
なんと言っても今年は、オランダのモナ・リザ「真珠の耳飾りの少女」を始め、フェルメール6作品が日本で会えるという、まさに「フェルメール年」です。「フェルメールへの招待」は、絶妙のタイミングで発売されました。フェルメールの作品は、世界中でわずかに37作品が確認されているだけです。本の帯には、「初めてでも楽しく鑑賞できる“フェルメール入門”」というコピーが大きく書かれています。本の帯の裏をみてみると、この本のポイントが、以下のように整理されています。
◎絵のポイントを徹底解説 パーフェクト鑑賞講座
◎本物の大きさを体感! 原寸大にしてみると
◎フェルメールを「語る」ための 5つのキーワード
◎32億円で落札された 「37枚目」のフェルメール
◎レンブラント、フランス・ハルス、ライスダール・・・ 同時代の画家たち
◎全点踏破のための 17美術館ガイド ほか
フェルメール関連の本はたくさんありますが、フェルメールの「入門書」としては、初心者の知りたい事柄が取り上げられていて、始めてフェルメールの接する人にとっては、この本は最上の贈りものとなっています。なにしろタイトルが「フェルメールへの招待」ですから・・・。あるいは、フェルメールをちょっとかじった人にとっても、一旦立ち止まって、見直してみることができる内容になっています。そうそう、新潮社の「とんぼの本」よりも一回り大きいので、レイアウトも見易く、画像も大きく使われていて綺麗です。
まず前半は、「パーフェクト鑑賞講座」として、次の6つの作品を取り上げています。「真珠の耳飾りの少女」「牛乳を注ぐ女」「手紙を読む青衣の女」「絵画芸術」「真珠の首飾りの女」「デルフトの眺望」です。そして後半は、「フェルメール30作品誌上ギャラリー」として、フェルメールの年代別に取り上げて解説しています。
例えば、「デルフトの眺望」、まず大きく画像があり、次のページに「ここがポイント!」として、詳細に解説しています。「デルフトの眺望」は、20世紀最高のフランス文学「失われた時を求めて」で、プルーストが「私は世界でもっとも美しい絵画を観た」と絶賛した作品。フェルメール、2枚しかない風景画の1点です。
「最高傑作と評判の高い、独創的な風景画」とタイトルにあります。そしてなんと「デルフトの眺望」の一部分を、原寸大に拡大して載せています。原寸大で載せるとは、大きな画集であるならいざしらず、入門書では思いつきませんでした。「入門書」らしく、懇切丁寧な解説です。
「フェルメールを『語る』ための5つのキーワード」が面白い。これも5つのキーワードごとに、詳細に解説しています。
1.こよなく愛した「青色」
2.バブル絶頂期「オランダに生まれた画家」
3.14人の子だくさん「宿屋のおやじ」
4.現存しているのは「37点のみ」
5.最大のライバルは「レンブラント」
次に「32億円で落札された『37枚目』のフェルメール」です。近年になってフェルメールの『真作』と鑑定された作品が、オークションでの落札額は32億円、というものです。「ヴァージナルの前に座る若い女」(個人蔵)が、それです。また、「世紀の贋作事件はいかにして起こったのか?」についても項を設けています。
「ちょっと美術史」として、フェルメールの作品を観るためには、同時代のオランダの画家たちの作品も知っておく必要があり、解説しています。レンブラント、フランス・ハルス、ヤコブ・フェン・ライスダール、等々も。また、他国の同時代の巨匠たちについても、ベラスケスやルーベンスなどにも紹介されています。オランダと言えば、やはりフェルメール以前と以後、「北方」の画家たちも紹介されています。
「描いた順に全作品の大きさを比べてみよう」は、フェルメールの全作品をいわゆるセイム・スケールに並べています。朽ち木ゆり子と前橋重二の「フェルメール巡礼」の裏表紙にも全作品がセイム・スケールで載っていますが、こちらは大きさをメジャー代わりに、“牛乳パック”を使用している点が分かり易く面白い。ここでは「フェルメールは“小品”の名手」であるとしています。
そして最後に「全17美術館ガイド」が載っています。フェルメールの作品に出会える美術館は、ヨーロッパとアメリカに全部で17館。一挙紹介されています。これは便利です。しかし、現在、定期的に後悔されているフェルメール作品は34点です。1点は現在行方不明。残りの2点のうち「聖プラクセディス」は、アメリカ・ニュージャージー州プリンストンのバーバラ・ピアセッカ・ジョンソン・コレクションにあり、情事後悔されていないが、2000年に大阪へ来ました。「ヴァージナルの前に座る若い女」は個人所有ですが、2008年に来日。展覧会情報をこまめにチェックしておくと、全点踏破できるチャンスはある、と書かれています。
その他、「私のフェルメール」として、中野京子と三浦奈保子が短文を寄稿しています。監修は國學院大学教授の小池寿子先生。編集・執筆に3人の名前が書かれていますが、どなたがどこの執筆を担当したのか、その辺が書かれていないのはちょっと残念でした。
監修:小池寿子(國學院大學文学部教授)
編集・執筆:株式会社タミワオフィス
中村剛士、橋本裕子、原朋希
デザイン:デザインワークショップジン
撮影:片山久子
発行:2012年2月29日第1刷発行
編者:朝日新聞出版
印刷・製本:大日本印刷株式会社
出版記念パーティ
2012年3月3日(土)
会場:「渋谷Fiesta」
http://r.gnavi.co.jp/g801409/
幹事:「はろるど・わーど
」はろるどさん
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