出光美術館で「長谷川等伯と狩野派」展を観てきました。観に行ったのは11月2日、もうずいぶん時間が経ってしまいましたが、とりあえず以下に書いておくことにします。等伯と狩野派というと、思い出すのは2008年に東京国立博物館平成館で開催された「対決 巨匠たちの日本美術」展です。多くの巨匠たちが対決していて、展覧会としては稀に見る大規模な展覧会でした。そのなかで三番目に出てきたのが、「永徳vs等伯 墨と彩の気韻生動」でした。「狩野永徳と長谷川等伯、この二人はまさに生死をかけて対決した」と、解説にあります。
「対決展」で僕は始めて、永徳の「檜図屏風」を観、また等伯の「松林図屏風」を観ることになりました。「対決展」の記事をブログに書いたのですが、今読み直してみると、「とりあえず、ここまでで僕の限界です。その他の「対決」、永徳と等伯、宗達と光琳、大雅と蕪村、鉄斎と大観については、まさに僕の弱い部分、今までの僕には馴染みの少ない作品でしたので後回し」と、書くことを放棄していました。その頃の僕は、永徳も等伯も、ほとんど知りませんでした。「対決展」で観たのは、永徳が4つの屏風、等伯が3つの屏風でした。
と、ここまで書いて、前に書いたものを読み直してみると、同じようなことを書いていました。
その後、2009年には、栃木県立博物館で「狩野派―400年の栄華―」を観ることになります。また、2010年には、東京国立博物館平成館で「長谷川等泊」展を観ることになります。「狩野派―400年の栄華―」の方は、栃木県という枠はありましたが、狩野派の大枠を掴むことができました。また「長谷川等伯」展は、もうこれは等伯の集大成、これを観ずして等伯を語る事勿れ、です。狩野派はたくさんの人で多面性を表現しましたが、等伯は一人で多面性を表現しました。一人でここまでできるのかと思うほど、幅広い画業でした。
等伯と狩野派、等伯と永徳の確執、「対屋事件」はよく知られています。永徳が、御所対屋の障壁画制作を「はせ川と申者」に申しつけたのは迷惑であり断ってくれるように懇願したというものです。御所の諸施設の障壁画制作をマカされていた御用絵師・永徳一門にとって、新興・長谷川派の割り込みはなんとしても阻止しなければならなかったことでした。この前年に、狩野派と縁が深い大徳寺で、千利休が施主となって三門の増築が行われており、その壁画制作は長谷川等伯の一門が抜擢されていました。この三門壁画の制作が等伯の名を一気に高めたという。
展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 狩野派全盛
第2章 等伯の芸術
第3章 長谷川派と狩野派―親近する表現
第4章 やまと絵への傾倒
第1章 狩野派全盛
第2章 等伯の芸術
第3章 長谷川派と狩野派―親近する表現
第4章 やまと絵への傾倒
「長谷川等伯と狩野派」展
能登国七尾(現石川県七尾市)の地方絵師から、京の中央画壇の中心的な存在にのぼりつめた長谷川等伯(1539~1610)。没後400年を迎えた昨年、等伯の芸術の魅力がより広く紹介され、現在でも多くの人びとの関心を集め続けています。当館でも「国宝松林図屏風」展(2002年)や「新発見・長谷川等伯の美」展(2005年)など、等伯についての展覧会を意欲的に開催してきました。今回の展覧会では、等伯が強大なライバルとして意識する存在であった“狩野派”との関係を視野に入れ、また新しい角度から等伯の芸術をご紹介します。等伯が七尾から京へ移住したのは元亀2年(1571)、33歳の頃とみる説が有力ですが、その頃、信長や秀吉ら時の権力者の支持を得ていたのは狩野派でした。狩野派は始祖の正信(1434~1530)が室町幕府の御用絵師となり、次代の元信(1477?~1559)が堅固な流派体制を築いて以来、画壇の中心勢力となった一大画派です。等伯がようやく上洛を果たした頃、既に狩野派は若き永徳(1543~90)を当主として、巨樹表現を特徴とする壮大な桃山絵画様式を打ち立て、画壇に君臨していました。狩野派と比べて、等伯率いる長谷川派は、規模の小さな新興画派といえます。しかし、画壇の覇者として揺るぎない組織力を誇った狩野派も、急速に実力をつけてくる長谷川派に対しては、やがて警戒心を持つようになります。互いを強く意識し合うようになる長谷川派と狩野派。本展覧会では、完成度の高い華麗な様式美をそなえる狩野派の絵画と、幅広い古典学習から自由で独創的な表現を試みた等伯とその一門の絵画を出光コレクションから厳選し、一堂に展示します。両画派の絵画様式の特徴や差異、また意外な親近性などにも目を向けていただき、狩野派全盛の時代、わずか一代で桃山画壇に確かな足跡を遺し、後世へ余波を与え続けた等伯芸術の魅力を、主に狩野派との関係からじっくりとご鑑賞いただきます。
「出光美術館」ホームページ
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