損保ジャパン東郷青児美術館で「オランダ・ハーグ派展」を観てきました。観に行ったのは5月9日のことです。西新宿の損保ジャパン本社ビル42階にある美術館、高速エレベーターを降りると、なんとそこにはアート・ブロガーの大先輩「とら」さんがいるじゃないですか。以前はTakさん主催のオフ会でよくお会いしていましたが、久しぶりにお会いしたので立ち話を少々・・・。5月10日の「とら」さんのブログ(Art & Bell by Tora
)にはその時の様子を、以下のように書いていました。
ホールで下りのエレベーターを待っていると、旧知の美術ブロガーの「とんとん」さんが、そのエレベーターから出てこられた。ニアミスならぬ高層ビル42階での空中衝突である。互いに久闊を序し、近況を述べあった。
損保ジャパン東郷青児美術館、長い美術館名でしたが、またまたの合併により、2014年9月1日より「東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館」に名称変更されるという。
それはさておき「オランダ・ハーグ派展」。19世紀、オランダのハーグを中心に、屋外での自然観察をもとに、風景と田園生活を描き出すことに挑んだ画家たちがいました。彼らは「ハーグ派」と呼ばれ、オランダの黄金時代の巨匠たちが築いた伝統に学んで、オランダらしい作品を創りだしました。また同時代フランスの「バルビゾン派」からの影響もありました。
「ハーグ派」の画家たちは、自然主義的な絵画を描いてきた自国の伝統と、バルビゾン派から受けた近代的な自然主義絵画から多くを学び、発展させました。オランダに特徴的な景色―運河や風車、放牧地の牛、水面の光、高く輝く空や広大な海、そして日々の労働、慎ましい過程の日常を、独自の静謐で詩的な方法のもとに描き出しました。
僕が特に注目したのは、「ハーグ派と海」です。海に対する感覚は、オランダ人の感受性の根本にあります。海そのものや沿岸の生活は、ハーグ派絵画の主な主題でした。海の威厳を表現したのは、誰よりもメスダッハでした。メスダッハは1869年にブリュッセルからハーグへ移った際、彼はスヘフェニンゲンの海に近いところに居住することにしました。「目の前に海が見えなければならない、海とともに生きなければならない。さもなければ、なにも得られないのだ」と語ったという。
「スヘフェニンゲン海岸とパノラマ・メスダッハ」については、次項で書きます。
今回の展覧会は、「オランダ・ハーグ派」を日本で初めて本格的に紹介しようとするものです。またハーグ派の美術は、後にオランダにとどまらず、世界の絵画史に大きな変革をもたらした2人のオランダ人画家、ファン・ゴッホとモンドリアンに影響を与えた点でも重要です。彼らは伝統的造形を大胆に改変し、新たな造形を20世紀にもたらしました。
僕は2011年4月に10日間、「オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ」を回るツアーに参加しました。まず最初に宿泊したのが、ハーグ郊外の海辺のリゾート地のホテルでした。もちろん、次の日に「マウリッツハイス美術館」へ行くためでした。「ベルギー王立美術館」や「クレラー・ミューラー美術館」、「アムステルダム博物館」や「ゴッホ美術館」等々を観て回った、素晴らしいツアーでした。そんなわけでゴッホとモンドリアンの作品は「クレラー・ミューラー美術館」でまとまって観ることができました。
言うまでもなく、ゴッホの「ひまわり」(1888年)は、損保ジャパン東郷青児美術館が所蔵している作品です。
展覧会の構成は、以下の通りです。
Chapter 1
序章:バルビゾン派
Chapter 2
ハーグ派
Chapter 3
終章:フィンセント・ファン・ゴッホと
ピート・モンドリアン
Chapter 1
序章:バルビゾン派
Chapter 2
ハーグ派
風景画
大地で働く農民
家畜のいる風景
室内と生活
風景画
Chapter 3
終章:フィンセント・ファン・ゴッホと
ピート・モンドリアン
「近代自然主義絵画の成立―オランダ・ハーグ派展」
19世紀後半のオランダで、ポスト印象主義の画家ゴッホが「大物(マストドン)」とよんだ画家たちがいました。彼らは活動の拠点であった都市の名にちなんで「ハーグ派」とよばれていました。本展覧会はこのハーグ派に焦点をあてた日本で最初の展覧会です。ハーグ派はフランスのバルビゾン派の影響を受けながら、17世紀オランダ黄金時代の絵画を再評価し、屋外における自然観察を基盤として風車や運河、海景や船といったオランダならではの風景、漁業や農業に従事する人たち、室内など身近でありふれた光景を、透明感のある繊細な光とともに描きました。本展覧会ではオランダのハーグ市立美術館の所蔵作品を中心に、ハーグ派の作品だけでなく、クレラー=ミュラー美術館、ならびに国内に所蔵されているバルビゾン派の作品、そしてハーグ派の影響を受けたゴッホと抽象画家ピート・モンドリアンの初期作品もあわせてご紹介いたします。「オランダ・ハーグ派展」
図録
監修・執筆:
アン・デュマ(ロンドン、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ学芸部長)
ベンノ・テンペル(ハーグ市立美術館館長)
ハンス・ヤンセン(ハーグ市立美術館学芸部長)
古谷可由(ひろしま美術館学芸部長)
編集:(株)ブレーントラスト
発行:「近代自然主義絵画の成立―オランダ・ハーグ派展」カタログ委員会
©2013
制作:印象社
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