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呉美保監督の「そこのみにて光輝く」を観た!

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2013年11月27日のこのブログに、以下のように書きました。
ドキュメンタリー映画「書くことの重さ作家佐藤泰志」を観ました。その時に、佐藤の作品「そこのみにて光輝く」が映画化され、「2014年春 テアトル新宿他 全国ロードショー」という情報を得たので、映画を観る前に読んでおこうと思い立ちました。

佐藤泰志の「そこのみにて光輝く」を読んだ!


テアトル新宿で、呉美保監督の「そこのみにて光輝く」を観てきました。「2014年春」、つまり今日4月19日が映画の公開日でした。これを逃すわけにはいかないと思い、何とか都合を付けて18時40分の回に行ってきました。まだ映画を観た余韻がさめやらぬ、もう少しこのままでいたい、ここに書くのがもっていない気持ちです。まあ、書くといってもたいしたことは書けませんが・・・。


佐藤泰志原作の映画化された作品「海炭市叙景」を観てから、函館には2回ほど行きました。その雰囲気が、蘇ってきました。この映画も、つまり佐藤泰志原作の映画化第二作目となりますが、当然の如く背景として函館の市街地や海の風景が出てきます。特に奇をてらったこともなく、ほぼ小説と同じように進行しました。季節は函館の短い夏、です。


達夫(綾野剛)と拓児(菅田将暉)はパチンコ屋で出会い、ライターの貸し借りから意気投合します。拓児はそのお礼にと、達夫に食事をご馳走するため、家に連れ帰ります。バラック同然の拓児の家には、寝たきりの父親と、その世話をしている母親、そして拓児の姉千夏(池脇千鶴)が住んでいました。拓児には高山植物を育てるというやさしい一面もありました。千夏は達夫のために心のこもったチャーハンをつくります。達夫は次第に千夏に引かれていきます。しかし千夏には、中島(高橋和也)という中年の愛人がいました。


佐藤泰志の原作、物語として巧くできているのは、幾つかのポイントがあります。拓也は仮釈放の身で、千夏の愛人中島に身元保証人になってもらっていること、中島の会社の造園業に雇われていること、千夏の職業は水商売とはいえ、実質は売春婦であること、寝たきりの父親は性欲があまりにも強く母親だけでは足りずに千夏にも求めていたこと、など、底辺で生きる家族、拓也の側のさまざまな事情があります。


それに絡めて、達夫は元砕石現場で発破師をしていたこと、砕石現場で誤って人を殺してしまったこと、妹からは両親のお墓を何とかするようにと手紙で催促されていること、そして火野正平演じる採石場の上司が砕石場の仕事に戻るようにとちょくちょく顔を出していること、砕石場の仕事に拓也が興味を示して二人で採石場の現場へ行くことが決まっていたこと、等があります。


函館の短い夏を舞台に、これらが巧妙に絡み合い、結び付いて、物語ができています。主役の綾野剛、押さえた控えめの演技でよかったですが、それと比して菅田将暉の演技はややオーバーで、五月蠅い感じがしました。綾野剛と対比的に扱ったのでしょうが・・・。池脇千鶴、文句なくよかったですね。なんとなく投げやりなところ、生きる目的を見失った役柄、「千夏役は池脇千鶴で間違いない」。以前、こんなことを書きました。


映画の千夏役は池脇千鶴でした。実は「爆心 長崎の空」で脇役でしたが池脇千鶴を観たのを思い出して、黒いスリップ姿が似合うと思いました。かつての清純な少女役から、やや太った、捨て鉢で、投げやりな、だらしのない姿の池脇千鶴に大きく変わっていました。千夏役は池脇千鶴で間違いない、と確信しました。そうだ、一昔前だったら荻野目慶子、ですよ。


文庫本の「そこのみにて光輝く」は、第一部「そこのみにて光輝く」、第二部「滴る陽のしずくにも」となっています。第一部は、拓児と千夏、そして達夫の3人を軸に進んでいきます。第二部は達夫と千夏は結婚し、子供も授かり、それなりに幸福な家庭を作っています。


以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。


チェック:『海炭市叙景』の原作者、佐藤泰志の三島由紀夫賞候補となった小説を基に、北海道函館を舞台に生きる場所のない男女の出会いを描くラブストーリー。仕事を失った男がバラックに住む女と出会い、家族のために必死な彼女をいちずに愛し続ける姿を描く。主演は、『シャニダールの花』などの綾野剛。主人公と惹(ひ)かれ合うヒロインを、池脇千鶴が演じる。メガホンを取るのは、『オカンの嫁入り』などの呉美保。美しい函館を背景につづられる、男女の愛の軌跡と人生の過程が心に突き刺さる。

ストーリー:仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知り……。


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「そこのみにて光輝く」公式サイト


朝日新聞:2014年4月18日

性・暴力を活写 新境地

「そこのみにて光輝く」監督の呉美保

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sato 「佐藤泰志―生の輝きを求めつづけた作家」

2014年2月28日初版発行

監修:福間健二

発行所:河出書房新社






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