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ギャラリー間で「長谷川豪展」を観た!

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ギャラリー間で「長谷川豪展」を観てきました。デビュー作の「森のなかの住宅」から、最新のプロジェクト「石巻の鐘楼」まで、全11プロジェクトを、模型やスケッチで紹介されています。案内には、タイトルの「スタディとリアル」には、プロジェクトを通してさまざまな現実(Real)に直面するなかで、能動的に考え、学ぶこと(Study)を繰り返しながら、自身を成長させ、建築の質を高めていくという、長谷川氏の未来への積極的な眼差しが表れている、とあります。


実作では、デビュー作の「森のなかの住宅」と、軽快な「森のピロティ」です。特に「森のピロティ」はポスターにも使われているとおり、森の樹木の中に細い鉄骨の柱で軽く持ち上げられた傑作です。この「軽さ」が凄いと思います。どうしてもこのような展覧会では、写真と模型の展示が主になってしまいます。人によって異なるとは思いますが、建築の場合、スタディとリアルの絶え間ない応答の末にできてくるものです。


がしかし、東日本大震災を受けて思い立ったという「石巻の鐘楼」、展覧会が決まってから発想したそうです。これはギャラリー間の中庭につくられていて、やはり実物は迫力があります。会期後に石巻の幼稚園に移築するという。もし「石巻の鐘楼」がなかったら、月並みな展覧会に終わっていただろうと思うと、石巻市に幼稚園に鐘楼を送ろうというプロジェクトを長谷川が立ち上げたことは、その発想は紛れもなく優れた建築家の発想であり、東日本大震災に対する建築家の社会貢献の一つのあり方であった、と言えます。


鐘楼の鐘について。長谷川は知人の紹介で、富山県高岡市の鍛冶屋・小泉製作所の小泉さんと、日本にカリヨンを普及させたカリヨンセンターの田村さんと知り合います。鐘の音質は、圧倒的にヨーロッパ産の鐘が良いという。たまたま9月にヨーロッパに鐘を見に行くことになっているというので、2人についていきます。オランダのアイントホーフェンにあるベルメーカーを訪問したところ、中古の鐘のストックがありました。役目を終えた鐘がゴロゴロ置いてあったが、その中に形と装飾が綺麗な、気になる鐘があったという。その鐘は、1930年頃にオランダで鋳造され、北ドイツのメレ市庁舎で約80年ものあいだ鳴らされた鐘でした。昨年鐘の付け替えを行ったので引き取られたものでした。「ドイツの市庁舎で流れていた鐘の時間を石巻に繋げる」と、長谷川は言う。


以下、「ギャラリー間」のホームページより。


長谷川豪:略歴
1977年 埼玉県生まれ/2002年 東京工業大学大学院修士課程修了/02~04年 西沢大良建築設計事務所/05年 長谷川豪建築設計事務所設立/09年~東京工業大学、東京理科大学、法政大学非常勤講師
◇◇主な受賞=2005年 SDレビュー2005鹿島賞/07年 第9回東京ガス住空間コンペグランプリ、平成19年東京建築士会住宅建築賞金賞、第28回INAXデザインコンテスト金賞/08年 第24回新建築賞


スタディとリアル:長谷川豪
僕にとって建築をつくることは、現実に学び、現実を押し広げることである。大学で建築の設計を学び、設計事務所で実務を学び、自分で設計活動を始めても学ぶことが終わらないどころか、建築を考え、つくるうえで、学ぶということがますます切実なものになった。「学ぶ」には、LearnとStudyがある。Learnは教えを受けて修得するという意味であるのに対し、Studyは「学ぶことそのもの」を意味する。能動的なニュアンスがStudyには含まれているようだ。研究とか努力とか習作といった意味ももつ。建築の世界では「スタディ模型」など設計のなかでつくられる試作という意味で使われるが、自分がつくった案を客観的に眺め、考え、改め、育てていく行為は、まさに自ら能動的に学んでいくプロセスでもある。自分の案を育てると同時に、自分自身を成長させようとしている。なかば無意識のうちに、現実のプロジェクトを通して自分自身を乗り越え、新たな自分を開こうとしている。そこまで来てようやく、思いがけない新たな現実が立ち現れてくる気がする。現実に学ぶことと現実を押し広げることは表裏一体だ。この展覧会を機に、東日本大震災で被害を受けた石巻市のある幼稚園に建築を贈るプロジェクトを立ち上げた。とても小さな建築を設計し、TOTOギャラリー・間の中庭に建て、会期後にそれを幼稚園に移築する。今回の震災のような「想定外」の前では、修得したこと=Learnだけで対応することが困難であることを僕達は経験した。震災に限ったことではない。複雑で不確かな時代だとされるいま、その都度問いを繰り返しながら現実のプロジェクトに自ら迫っていくという姿勢、Studyが不可欠なのではないか。学ぶということが、現実につくることの質を高めてくれる。展覧会では、僕がこれまで設計してきたプロジェクト、および石巻のプロジェクトにおける、StudyとRealの絶え間ない応答を見てもらいたいと思う。


会場風景



「森の中の住宅」「森のピロティ」



「石巻の鐘楼」





「長谷川豪展 スタディとリアル」
長谷川氏は、デビュー作「森のなかの住宅」(2006年)で、切妻屋根の下に束材で支えられた切妻型の小屋裏を創出し、私たちに独特な空間感覚を印象付けました。続く「桜台の住宅」(2006年)では住宅の中心に大きなテーブルを配することで、個室とリビングの新しい関係性を提案し、「練馬のアパートメント」(2010年)では各戸に形状の異なる大きなテラスを併置し、都市の気配を集合住宅に取り込みました。また「森のピロティ」(2010年)では、6.5メートルの階高のピロティの上に居室を9本の細い柱で支え、周辺の森と建築とを融合させるなど、大胆な空間構成を提案しながらも、住み手と建築、建築と周辺環境の関係を心地よくつなぐ空間を実現することで、高い評価を受けています。現在、手掛けている「石巻の鐘楼」(2012年予定)は、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市のある幼稚園の敷地内に、長谷川氏と有志によって小さな「鐘楼」が寄贈されるという計画で、鐘の音が復興への希望の象徴となればとの願いが込められています。展覧会では、長谷川氏が現在までに手掛けた11のプロジェクトを、それぞれの計画に応じたスケールの模型やスケッチによって、周辺環境との関係性を含めて紹介します。また、中庭には「石巻の鐘楼」が建てられ、会期終了後、石巻に移築されます。タイトルの「スタディとリアル」には、プロジェクトを通してさまざまな現実(Real)に直面するなかで、能動的に考え、学ぶこと(Study)を繰り返しながら、自身を成長させ、建築の質を高めていくという、長谷川氏の未来への積極的な眼差しが表れています。今後、ますますの活躍が期待される長谷川氏の実践を通して、これからの新しい建築の可能性を感じていただければ幸いです。


「ギャラリー間」ホームページ

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