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藤田令伊の「フェルメール 静けさの謎を解く」を読んだ!

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とんとん・にっき-fuji

藤田令伊の「フェルメール 静けさの謎を解く」(集英社新書:2011年12月21日第1刷発行)を読みました。先日は福岡伸一の「フェルメール光の王国」(木樂舎:2011年8月1日第1刷発行)を読み、その前は宮下規久朗の「フェルメールの光とラ・トゥールの焰―『闇』の西洋絵画史」(小学館101ビジュアル新書:2011年4月6日)を読みました。最近のフェルメール本では、朽木ゆり子・前橋重二の「フェルメール巡礼」(新潮社とんぼの本:2011年11月25日発行)も購入しましたが、この本は「芸術新潮2008年9月号」の「やっぱり気になるフェルメール」をリメイクしたもののようですが、まだ読んでいません。


いずれにせよ、次々と出る「フェルメール本」、読むのが追いつきません。そうそう、「フェルメール光の王国」の巻末に載っていた参考文献に「赤瀬川原平の名画探検 フェルメールの眼」(講談社:1998年)があったので、アマゾンで注文して届いています。これはまだ読んでいませんが、赤瀬側原平ですから、どういうフェルメール論が飛び出すか、読むのが楽しみです。


藤田令伊の「フェルメール 静けさの謎を解く」ですが、著者の藤田令伊、略歴を見ると、1962年生まれ。アートライター。大手出版社編集者を経て、現職。「フツーの人」の立ち位置を大切にアート界とファンを橋渡ししている。アートポータルサイト「フェルメール美術館 」主宰。著書に「現代アート、超入門!」(集英社新書)など、とあります。「アートライター」というところが面白い。本のカバー裏には、以下のようにあります。

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レンブラントやゴッホと並び、いまやオランダを代表する画家になったフェルメール。彼には“静謐の画家”という異名が冠せられている。しかし、「なぜフェルメールの絵が静かなのか」という問題が真正面から語られたことはなく、専門書にもその理由は記されていない。本書は、フェルメールの絵における色彩や構図、モチーフ、光などへの考察をはじめ、一七世紀オランダの時代背景や精神文化に至るまでを分析し、フェルメールの静けさの謎に迫る。

この本の始めに8枚の口絵があり、そして目次は以下の通りです。

第1章 フェルメールブルー
第2章 構図と素材の秘密
第3章 女たちの姿態
第4章 剥奪される意味
第5章 穏やかな光、霞む空気
第6章 静けさを描くことの理由
第7章 静かでないフェルメール


フェルメールのような絵を描いていた画家は、当時のオランダには他にもいました。が、“静謐の画家”と呼ばれるのはフェルメールだけです。そこには他とは一線を画す“何か”があるからではないか。その“何か”がフェルメールの本質的な部分と深く関わっているのではないかと、著者はいいます。世界中から愛されるフェルメール、その“静けさ”に分け入ってみたくなるといい、本書はフェルメールの入門書ではなく、いささかマニアックなフェルメール本であると、著者は始めに明言しています。


“静けさ”については、今まではエッセイ的に印象や感想を述べたものしかなく、実証的に解明したものは自分は知らなかったため物足りなかったという。著者はできるだけ合理的な分析と考察に基づいて、フェルメールの“静けさの謎”に迫ろうとした、と述べています。ただ、分析的考察的な視点が先に立ったので、フェルメールの絵を味わうという点からは遠くなってしまった、と反省もしています。


第2章構図と素材の秘密の項では、テル・ボルフと、デ・ホーホの影響や本質的な違いが、分かり易く述べられていたこと、先輩画家たちからアイデアを借用し、リミックスして作品を練り上げてったのであり、自らの創意のみによって描いたのではない、というくだりは面白い。


第4章剥奪される意味の項では、フェルメールの絵はモチーフの削除で物語性を希薄化させ、絵を読む手がかりを少なくしているとして、ミニマルアートと比較しています。ミニマルアートの意義は、意味性を削ぎ落としてアートとして成立可能かを極限まで追求する点、純粋なアートへの求道にあるとしています。ここでもテル・ボルフとデ・ホーホを例にあげて比較しています。


第5章穏やかな光、霞む空気の項では、フェルメールとレンブラントを比較対照しています。レンブラントは強い光で激しいコントラストを生み出すのに対して、フェルメールは穏やかで、空間全体に光が満ちている感じだという。左側から光が差し込むのは、ほとんどの創作を自身のアトリエで行っていたからだという。そしてフェルメールのうっすらと霞がかった画面は、映画のフィルムの映像であると述べています。


第7章静かでないフェルメールの項は、他の章とは少し異なっています。「士官と笑う女」を取り上げて、この時期に描かれたフェルメールの作品群のなかでも異質であるとしています。フェルメールが“静けさ”を追求したとするなら、「士官と笑う女」は騒々しく、静けさからは最も遠い作品です。もう一つ、二路線同時並行で進んだという話。複数の人物が登場する作品と、女性の単身像を描いた作品。この二つの路線をフェルメールは同時進行したということです。そして男女図三部作を最後にこの路線をフェルメールが捨てたという。静かでないフェルメールがアンチとして羅針盤の役目を果たしたと述べています。フェルメールは男女図路線を捨て、女性単身図に専念し、“静謐の画家”としてピークを迎えることになります。


がしかし、「天文学者」や「地理学者」、それまで描いたことのない男性一人の絵を描き、静謐感はますます薄れ、ピーク時のようなレベルに復活することはなかった。フェルメールの人生自体は、絵ほどの静けさとはかけ離れていたこと、10人を超える子供がいて、公の仕事や事務手続きも増え、社会的な地位が上がると、絵に集中することが難しくなった。結論として、逆説的に「静謐なるフェルメールの絵画世界は、静謐ならざる彼の実人生からこそ生み出されたものだったのかもしれない」と、藤田はいいます。


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