TOTOギャラリー・間で「内藤廣展 アタマの現場」を観てきました。1995年に「素形の構図 還元する場のかたち」と題して開催された展覧会に続いてギャラリー間での2度目の展覧会です。今回は、ギャラリー・間の展覧会場を、自身の設計事務所風にしつらえた空間として、展示会場としています。内藤廣の作品は、最初期の渋谷区松濤の「ギャラリーTOM」から観ています。過去、このブログに書いた内藤廣関連の記事を、下に載せておきます。
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内藤廣は今回の展覧会に際し、以下のように述べています。
この約10年間、ひたすら走り続けてきた。わたしの頭は、身の周りで拡大していく領域に追いつくのがやっとで、いまだに整理整頓がついていない。それはひとつの混乱状態ともいえるもので、山積みになった本と処理し切れない書類の束と懸案事項の図面とに囲まれたわたしの仕事場さながらである。展覧会では、ひとりの建築家として、混乱しつつ拡大してきた領域を背景に、それでも思考の基点としていつも建築に立ち戻ることで自分自身を保持してきた、わたし自身の「アタマの現場」をお見せするものになると思う。わたしは凡庸な人間だ。振り返ってみれば、幾つかの幸運に恵まれたことは確かだが、特別な才能があるわけではない。だから、わたしにできることは、誰にでもできることだと信じている。展覧会を見て、もし共感してもらえるところがあるのなら、それはあなたにもできることだ。わたしの「アタマの現場」と同様、世の中の混迷は続いている。ひょっとしたらこれは、「終わりのない物語」の始まりなのかもしれない。これからは、すっきりとした結論などどこにもない、ということに耐えねばならない。一方で、その耐えることの中で、この国の建築の文化は、ようやく成熟する時を迎えるのではないかとも思っている。ひょっとしたら、求められているのは、そしてわれわれがたどり着く先は、「偉大なる凡庸さ」のようなものかもしれない。
3階 第1会場
4階 第2会場
模型写真
内藤 廣:
1950年生まれ。1976年早稲田大学大学院修士課程修了。フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(スペイン・マドリッド)、菊竹清訓建築設計事務所を経て、1981年内藤廣建築設計事務所を設立。2001~2011年東京大学大学院にて、教授・副学長を歴任。2011年より同大学名誉教授・総長室顧問。主な建築作品に、「海の博物館」(三重県、1992年)、「安曇野ちひろ美術館」(長野県、1997年)、「牧野富太郎記念館」(高知県、1999年)、「倫理研究所富士高原研修所」(静岡県、2001年)、「島根県芸術文化センター」(島根県、2005年)、「日向市駅」(宮崎県、2008年)、「高知駅」(高知県、2009年)、「虎屋京都店」(京都府、2009年)、「旭川駅」(北海道、2011年)など。また近著には、『内藤 廣と若者たち 人生をめぐる一八の対話』(東京大学景観研究室編、鹿島出版会)、『内藤廣の頭と手』(彰国社)、『内藤 廣の建築 1992-2004 素形から素景へ1』(TOTO出版)、『内藤 廣+石元泰博 空間との対話』(ADP)、『形態デザイン講義』(王国社)などがある。
「内藤廣展 アタマの現場」
TOTOギャラリー・間において2度目となる建築家、内藤廣氏の個展を開催いたします。
1995年に「素形の構図 還元する場のかたち」(6.9~7.22)と題して開催された最初の個展では、「誰しもの心の奥底にある建築の原形質のようなもの」という概念に“素形”という名前を与え、自身の作品を語った。それから18年、内藤氏によって生み出された“素形”の概念は、さらに新たな意味と言葉が加わり、鮮明さを増している。「空間の価値」を常に探求してきた氏曰く、「建築はそこに生きる人の生命が宿る場所であり、人々が過ごした時間や空間の記憶が張り付くことによって、建築自体が命を得ているのである」と。そして個人の暮らしの夢である“素形”から、共同体の夢である風景、すなわち“素景”こそが、3.11を経た現代において実現されるべきものであると語る。展覧会場では、数々の作品を生み出してきた内藤廣建築設計事務所の一部を再現するとともに、初期の代表作から現在進行中のプロジェクト、更にはプロジェクトに終わった作品を通して思考の過程を紹介します。ひとりの建築家がひたすら走り続けてきた 「アタマの現場」を、その思考のなかから発せられた語録「言葉のかけら」とともに堪能ください。
「TOTOギャラリー・間」ホームページ
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