「われわれ作家、彫刻家、建築家、画家、これまで無傷に保たれてきたパリの美の熱烈な愛好者たちは、わが首都の真っただ中に、無益にして醜悪なるエッフェル塔が建設されることに対し、無視されたフランスの趣味の名において、危機に瀕したフランスの芸術と歴史の名において、あらんかぎりの力をこめ、あらんかぎりの憤りをこめ、ここに抗議するものである。」
これは「芸術家たちの反対請願書」の書き出し部分で、署名者の中にギー・ド・モーパッサンの名が見えます。モーパッサンは、しばしばエッフェル塔のレストランで昼食をとったが、しかし彼はこの塔が好きだったわけではない。「ここはエッフェル塔が見えないパリの唯一の場所だからだ」と彼は言っていた。実際、パリで、エッフェル塔を見ないようにするためには、無限の多くの注意を払わなければならない。(ロラン・バルト「エッフェル塔」より)
モーパッサンの小説については、中学生か高校生に成り立ての頃、古本屋で買った一冊の本で読んだ記憶があります。その本は手元にないので、思いだすままに書いていますが、世界文学全集の中の一冊だったのか、あるいはモーパッサン全集一巻本(または三巻本の一冊)だったのか、今では知るよしもありません。
いずれにせよ、モーパッサンの小説は、「女の一生」「ベラミ」「脂肪の塊」等々、読んでいました。若い頃に読んだので、もちろん、内容はほとんど覚えていませんが・・・。ただ「ベラミ」だけは、貧乏だが野心家の青年が、社交界のご婦人を渡り歩きのし上がっていくというストーリーは印象fが強く、よく覚えていました。主人公のジョルジュ・デュロアという名前も覚えていました。タイトルのBel-Amiは「美しい男友達」の意で、映画の中では愛人の娘がベラミさんと呼んでいました。同種のものとしては、少し後でしたが、スタンダールの「赤と黒」も夢中になって読みました。
ジョルジュは、『ラ・ヴィ・フランセーズ』紙の政治部長フォレスチエの美しい妻マドレーヌ・フォレスチエ(ユマ・サーマン)、マドレーヌの友人で可憐な人妻クロチルド・ド・マレル(クリスティーナ・リッチ)、そして、『ラ・ヴィ・フランセーズ』紙の社長ルセ(コルム・ミーニー)の夫人で清楚で上品なヴィルジニ・ルセ(クリスティン・スコット・トーマス)という3人の美しい女性たちと次々に出会い、征服してゆきます。
以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。
チェック:『トワイライト』シリーズのロバート・パティンソンを主演に迎え、文豪ギイ・ド・モーパッサンの長編小説「ベラミ」を映画化。19世紀、パリのブルジョア社会を舞台に、恵まれた容姿を武器にのし上がって行く青年のな野心を描く。タイプの違う貴婦人を演じるのはユマ・サーマン、クリスティン・スコット・トーマス、クリスティナ・リッチ。美女たちに愛されながらも満たされない主人公の陰のある表情にぞくりとする。
ストーリー:1890年のパリ、アルジェリア帰還兵のジョルジュ(ロバート・パティンソン)は鉄道会社に職を得たものの薄給で貧乏のどん底にいた。ある日、彼は騎兵隊時代の友人シャルル(フィリップ・グレニスター)と酒場で再会する。ジョルジュは新聞社勤務で金回りが良いシャルルに招かれ夕食に行き、才色兼備なシャルルの妻マドレーヌ(ユマ・サーマン)とかわいらしいド・マレル夫人(クリスティナ・リッチ)に出会う。