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世田谷文学館で「星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」を観た!

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世田谷文学館で「星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」を観てきました。「星を賣る店」というタイトルは、イナガキタルホの著作からきているようです。


世田谷文学館へいくのは久しぶりです。お隣の千歳烏山駅には、ちょくちょく行ってはいるのですが・・・。同じ世田谷区とはいえ、僕の家からは対角線上に反対方向、三軒茶屋駅から東急世田谷線に乗り下高井戸駅まで行って、京王線に乗り換えて蘆花公園駅まで、けっこう時間がかかります。2010年には“知の巨匠加藤周一ウィーク”で、2013年には“書物の達人丸谷才一”で、通ったことがありました。ロビーには絹谷幸二の「愛すべきもの達へ・希望」という大きな絵が懸かっています。


クラフト・エヴィング商會については、チラシも見ていないし、まったく何も知りませんでした。どうして文学館で開催されているのか、どんなのもが展示されているのか、文学館へ行ってみるまで皆目見当が付きませんでした。タイトルに「星を賣る店」とあります。なんとなくメルヘンチックです。「あるかもしれません。ないかもしれません。答えはいつもふたつあるんです」というところがポイントかもしれません。会場は思っていた以上に、観客は少ない。しかも女性客ばかりでした。「三丁目の夕日」に出てくるような、ノスタルジックな「医院」が会場内に作られていました。


それはさておき、まず、展示物で笑わせてくれます。「赤巻紙青巻紙黄巻紙」や「道化師の鼻」を手始めに、たくさん笑わせてもらいました。いわゆる「カワイイ」展示物がほとんど。著作が多いのには驚きましたが、著作のタイトルも面白い。「ないもの、あります」は、今回の展覧会のテーマのようです。「じつは、わたくしこういうものです」は、何か言っているようでなんだか分からない、が時代を表しているよう、といえば言い過ぎか。小川洋子との共著「注文の多い注文書」も面白い。主として新書ですが、いわゆる装幀デザインは、架空ではなく実務そのものです。僕も彼らがデザインした本、数冊持っていますが・・・。


クラフト・エヴィング商會“前口上”が、分かり易く面白いので、下に載せておきます。


クラフト・エヴィング商會って何ですか?
はい。たびたび訊かれるんですが、じつに難しい質問です。
さて一体、どうお答えしたらいいんでしょう?
そうですねぇ。まぁ、屋号ですよね、わたしたちの。
その、わたしたちっていうのは誰のことです?
ええと、申し遅れました。わたくし吉田浩美と申します。
同じく失礼いたしました。わたくし吉田篤弘と申します。
二人あわせてクラフト・エヴィング商會。
夫婦漫才をしております。
いや、漫才ではないですよね。
まぁ。ほとんど漫才のようなもんですけど。
じゃあ、何をしているんでしょう?
まぁ、大体いつも二兎を追っていますょね。
そう。だから、答えはふたつあります。
たとえば、小説を書きながらデザインの仕事をしています。
デザイナーではあるけれど、アート作品も作っています。
アートというか、なんというか――。
この世に「ないもの」を取り寄せるお店ですよね。
あれ? どっちなんです? お店ですか、アートですか?
やはり答えはふたつなので、そのどちらでもあります。
いずれにしても、架空の品物を取り扱っている――。
いえ、そういうわけでもなくて――。
町の書店に並ぶ本のデザインもしています。
取り扱っている品も、架空の品物ばかりではありません。
で、そのお店はどこにあるんです?
いえ、どこにもないんです。
あ、ないんですね。
いえ、じつを言うと、このたびの展覧会の会場に――。
ある――かもしれません。ない――かもしれません。
どっちなんです?
答えはいつもふたつあるんです。まずは見てのお楽しみ。


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クラフト・エヴィング商會(craft ebbing & co.)は吉田浩美と吉田篤弘によるユニット名。著作の執筆と、装幀を中心としたデザイン・ワークを主として活動している。これまでに発表された著作は以下のとおり。
どこかにいってしまったものたち(1997 年 筑摩書房)
クラウド・コレクター / 雲をつかむような話(1998 年 筑摩書房)
すぐそこの遠い場所(1998 年 晶文社)
らくだこぶ書房21世紀古書目録(2000 年 筑摩書房)
ないもの、あります( 2001年 筑摩書房)
じつは、わたくしこういうものです(2002 年 平凡社)
テーブルの上のファーブル(2004 年 筑摩書房)
アナ・トレントの鞄(2005 年 新潮社)
おかしな本棚(2011 年 朝日新聞出版)
注文の多い注文書(2014 年 筑摩書房)*小川洋子との共著


これらの著作のほとんどに、「クラフト・エヴィング商會」は物語の中の二次元的存在として登場するため、ユニット自体が架空の存在と思われがちだが、実際に存在し、これまでにおよそ1000 点を超える書籍・雑誌等の装幀デザインを担当し、2001 年講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞した。同時に、自著に登場する架空の品々を「ないもの、あります」の謳い文句のもと、さまざまな手法によって具現化し、自著と展覧会を通して数多く発表している。それらは「作品」ではなく、あくまで「クラフト・エヴィング商會」というセレクト・ショップが仕入れた「商品」として取り扱っている。
また、吉田篤弘は並行して小説家として活動し、以下の作品を発表してきた。
フィンガーボウルの話のつづき(2001 年 新潮社)
つむじ風食堂の夜(2002 年 筑摩書房)
針がとぶ Goodbye Porkpie Hat(2003 年 新潮社)
百鼠(2005 年 筑摩書房)
78 ナナハチ(2005 年 小学館)
十字路のあるところ(2005 年 朝日新聞社)*坂本真典との共著
空ばかり見ていた(2006 年 文藝春秋)
という、はなし(2006 年 筑摩書房)*フジモトマサルとの共著
それからはスープのことばかり考えて暮らした(2006 年 暮しの手帖社)
小さな男*静かな声(2008 年 マガジンハウス)
圏外へ(2009 年 小学館)
パロール・ジュレと紙屑の都(2010 年 角川書店)
モナ・リザの背中(2011 年 中央公論新社)
木挽町月光夜咄(2011 年 筑摩書房)
なにごともなく、晴天。(2013 年 毎日新聞社)
イッタイゼンタイ(2013 年 徳間書店)
つむじ風食堂と僕(2013 年 筑摩書房)
ガリヴァーの帽子(2013 年 文藝春秋)
うかんむりのこども(2013 年 新潮社)

また、吉田浩美の著作に、
a piece of cake(2002 年 筑摩書房)


吉田音名義による著作に
Think 夜に猫が身をひそめるところ(1999 年 筑摩書房)
Bolero 世界でいちばん幸せな屋上(2000 年 筑摩書房)


がある。本展はこれまでの活動を総括した商會初の棚卸し的展覧会である。

「世田谷文学館」ホームページ


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