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山下裕二の「知られざる山種コレクション10選」を聞いた!

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山種美術館創立45周年記念特別展

ザ・ベスト・オブ・山種コレクション

関連講演会「知られざる山種コレクション10選」

講師:山下裕二(明治学院大学教授、山種美術館顧問)

日時:2011年11月19日(土) 14:00~15:30

会場:國學院大學 院友会館


山下裕二の「知られざる山種コレクション10選」を聞いてきました。山下は、山種美術館の顧問でもあり、企画展のアドバイスをしたり、図録作成にも意見を述べたりしているようです。今回の講演会は、大きく三つに分かれた構成でした。一つは、「私が選ぶ山種コレクションベスト3」としたアンケート調査の結果選ばれた作品、一位から十位までの作品の解説、二つ目は、山下自身が「変化球」として選んだ「山種コレクション10選」、そして、見ておいた方がいいと思われる「知られざる山種コレクション」の紹介、でした。


熱が入りすぎて最初の「10選」で時間を喰ってしまい、後の二つは、残念ながらかなり急ぎ足でした。従って、予定されていた質疑応答のありませんでした。今回の展覧会「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」、キャッチコピーは、「教科書で、切手で見た名画、一挙公開」です。チラシは松岡映丘の「春光春衣」と速水御舟の「炎舞」を二つに分け合っています。これは、今までの山種は有名な「速水御舟」、これからは今は知られていませんがこれから山種の顔となるであろう「松岡映丘」ということを表しているという。


図録にもありますが、山下は業界用語の「蔵が深い」という言い方をします。この近くでは、根津美術館とか、静嘉堂文庫とかを例に出します。山種美術館もそうだという。展覧会を企画するたびに、こんなにあったのかと驚くという。まさに蔵が深い。


「私が選ぶ山種コレクションベスト3」、アンケート回答結果にコメントを付けます。


第1位 速水御舟「炎舞」

重要文化財で、ダントツで一番。創設者山崎種二は、昭和58年まで存命。旧安宅産業から一括して山種が譲り受けた。御舟の作品は、昭和51年のときには105点、現在は121点。膨大な陶磁器は大阪市に寄贈され、東洋陶磁美術館となります。以来「炎舞」は山種の顔となっている。御舟が描いたときには軸装だったが、現在は額装にされている。今回のチラシの右半分に使われている。「炎舞」と源氏物語を、安宅が所蔵する前に、ある美術商が枕元に置いて寝ていたという。映画監督の武智鉄二は御舟に惚れ込んで、御舟のコレクションで美術館を造ろうと計画していた。「炎舞」は、御舟が軽井沢に滞在したときに描いた。蛾が全部正面を見ていて、張り付けられたようだ。江津繰りとしては奥が深い。「キブチシュウ?」背景の色。黒。谷崎の「陰影礼讃」に羊羹の虎屋が出てくる。


第2位 村上華岳「裸婦図」

けっこう大きな絵です。切手にはなっているが、教科書に載っていないのは裸だからか?仏画を意識して描いている。顔はインド風。当時、インド趣味の流行があった。静養の風物が入ってくるなか、中国やその源流であるインドへの関心が高まった。「モナリザ」、レオナルドに感化されている。特に関西の画家たちは。日本におけるレオナルド受容を考えるとき、重要です。

第3位 竹内楢鳳「斑猫」

「はん」「まだら」、文字は間違いではない。沼津にあった八百屋の猫だ。キソー?皇帝の猫だと栖鳳は思った。キソー皇帝は、美術に肩入れした北宋時代の皇帝。背景はなにも描いていない。そこに猫が1匹。やはり猫の毛、金泥をごくわずか使っている。中国絵画の技法。リアリズムの手法として。栖鳳は猫をもらい受けて、京都で描いた。猫に蜂蜜を塗って、ポーズをとらせたという話も。エメラルドグリーンの目は見事だが、実際は猫はここまで緑色の、そんな色はしていない。落款の位置が絶妙。普通は落款は上の方には入れない。落款は野本画の重要な要素。等伯の「松林図屏風」の落款は、後世の人が入れたもの。

第4位 奥村土牛「鳴門」

山種美術館は、土牛の作品を現在135点、所蔵している。土牛の家で山崎さんが電話を貸してくれと言ったら家には電話はないと土牛は言った。次に被、電話屋が来て土牛の家に電話が引かれたという話。種二は抱一の作品を買った。裸一貫で群馬から出てきた。最初は丁稚奉公。最初に働いていた家に抱一があった。将来金持ちになったら、抱一を買おうと種二は思った。最初に買った抱一は真っ赤な偽物だった。それ以来、種二は直接、画家から買うようになった。熱海の建物「嶽心荘」、横山大観が書いた。

第5位 速水御舟「名樹散椿」

様式化が進んだ絵。背景はふらっと。琳派的屏風を意識している。金だけど、金箔ではない。四角い箔足が見えない。「巻きつぶし」という五方。村上隆もビックリ。超スーパーフラット。花の描写は絵の具を工夫して質感を出そうとしている。蛇のような枝ぶり。ギュ周之wは、気持ち悪いのが気持ちいい。どの絵からも、死臭が漂っている。

第6位 奥村土牛「醍醐」

茅場町が1998年、11年間、三番町に山種美術館はあった。現在の場所へは2009年から。恒例の「桜、桜、桜」の展示が毎年あります。

第7位 岩佐又兵衛「官女観菊図」

古美術に詳しい人たちは、これを推していた。辻先生が1970年の「奇想の系譜」で取り上げた6人の作家の一人です。美術手帳に連載し、単行本は初版たったの1000部。NHKではまたジャクチューと大人気だが、かつて千葉市美術館で「岩佐又兵衛」展をやったが、早すぎた。当時、辻先生が館長だった。岩佐又兵衛、荒木村重の息子だった。2歳で母親と死に別れた岩佐又兵衛は、ウルトラマザコンだった。メンタリティ、絵にパワーを与えている。ほつれ毛がすごい。

第8位 東山魁夷「年暮る」

京都の連作。川端康成から今描いておかないと、京都の景色は無くなってしまうと言われて描いた。与謝蕪村の絵が念頭にあった。

第9位 横山操「越路十景」

斬新な、破天荒な日本画を描いた。晩年になって故郷を描いた。

第10位 小林古径「清姫」

紀州の道成寺伝説をもとに描かれた作品。「私の空想を駆使して」。


第一位 速水御舟 「炎舞」

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第二位 村上華岳 「裸婦図」
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第三位 竹内栖鳳 「班猫」
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第四位 奥村土牛 「鳴門」
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第五位 速水御舟 「名樹散椿」
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第六位 奥村土牛 「醍醐」
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第七位 岩佐又兵衛 「官女観菊図」
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第八位 東山魁夷 「年暮る」
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第九位 横山操 「越後十景」のうち「蒲原落雁」
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第十位 小林古径 「清姫」


「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」展

1966(昭和41)年、日本初の日本画専門の美術館として誕生した山種美術館は、2011年で開館45周年を迎えます。これを記念し、当館が所蔵する約1800点の収蔵品の中から名品を選りすぐり、一堂に展示する特別展を開催いたします。当館のコレクションは、横山大観、上村松園、小林古径、加山又造、平山郁夫など、名だたる作家たちと直接交流を重ねる中で蒐集された日本画が核となっています。また、「幻の画家」と呼ばれた日本画家、速水御舟のコレクションは、質・量ともに国内外随一を誇ります。さらに、当館の収蔵品は日本画だけにとどまらず、琳派などの江戸絵画や浮世絵、近代の洋画も含まれています。今回の特別展では、岩佐又兵衛《官女観菊図》★、竹内栖鳳《班猫》★などの重要文化財や、切手になったことでも知られる村上華岳《裸婦図》★、福田平八郎《筍》☆、速水御舟《炎舞》[重要文化財]☆、奥村土牛《醍醐》☆をはじめ、当館の代表的な作品から隠れた優品まで約80点をセレクトし、前期と後期で全点を入れ替えてご紹介いたします。普段はまとまって展示されることのない傑作の数々が一堂に会する本展覧会を通じて、山種コレクションの真髄を心ゆくまでご堪能いただければ幸いです。
註:★前期展示(11/12~12/25)☆後期展示(1/3~2/5)


「山種美術館」ホームページ


とんとん・にっき-yama1 山種美術館創立45周年記念特別展

「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」

図録

監修:

山下裕二(山種美術館顧問・明治学院大学教授)

編集:

山種美術館学芸部

山崎妙子/高橋美奈子/三戸信恵/櫛淵豊子

発行:

山種美術館




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