静嘉堂文庫、創設されて120周年になるという。そして美術館が開館して20周年になるという。それを記念として「受け継がれる東洋の至宝」展が、静嘉堂文庫美術館で開催されています。その内容は、かなり大規模なもので、以下のような3部構成です。
PartⅠ東洋絵画の精華 名品でたどる美の軌跡
PartⅡ岩崎彌之助のまなざし
PartⅢ曜変・油滴天目―茶道具名品展―
今回はPartⅠ「東洋絵画の精華 名品でたどる美の軌跡」で、それは2部に分かれており、前期は「珠玉の日本画コレクション」、そして後期は「至高の中国絵画コレクション」となっている、いわゆる「コレクション展」です。が、しかし、その内容はというと、名品、優品ぞろいで、国宝や重要文化財クラスのものが続々出ています。力が入っているのがよく分かるのは、「リーフレット」を見ればよく分かります。入場者全員に配布されますが、これがなかなか素晴らしいできのものです。図録はないので、これは見学者にとってはありがたい。
と、ここまでは前期を観た時に書いたもの、ここからは、後期の「至高の中国絵画コレクション」となります。観に行ったのは5月29日、もう2週間も前のことです。リーフレットも「中国絵画コレクション」用のものになっています。画像と解説が8ページにわたって載っています。
ここには載せていないが、藍瑛という明末の画家の作品「秋景山水図」が出されていました。浙派や呉派を総合的に学び、さらに過去の偉大な画家たちの筆法を模した作品を多く残したという。「秋景山水図」は元末四大家のひとり、王蒙の筆法に倣って描かれたもの。この図には、江戸後期の儒者で書画家の貫名海屋による跋文と、江戸後期の画家・谷文晁の模本が附属しているという。文晁の模本は藍瑛に比べ、下部の水辺が描かれていない分、縦が15cm短いが横幅は同じ。落款までそのまま真似ているが、山の描き方や水辺の岩に文晁の独自性が見られるという。文晁は藍瑛を模写しながら、元時代の王蒙をも学ぶつもりでこの作品を描いたのだろう、と、リーフレットの解説にあります。
今年の初めに上海で上海博物館を観て、つい先日、ソウルの国立中央博物館を観に行きました。以前、台北の故宮博物院を観ました。いずれも膨大な水墨画の名作が展示されていました。青銅器も、陶磁器も、工芸品も、驚くほどの名作が展示されていました。上の谷文晁の例をあげるまでもなく、水墨画、陶磁器、等々、日本において受容され、さまざまな形で模倣され、引用されていきました。結局は元を正せば「原本は向こうにあるじゃないか!」ということになりますが、「それを言っちゃおしまいよ!」となるのかもしれません。僕の中ではその辺の整理がつかないままでいます。
が、またしても「青い日記帳」のTakさんの言葉が思い浮かびます。「わけもわからず、開催されている展覧会へ足を運び、そこで実際の作品と対峙し何かを得ておく。この蓄積こそが絵画を観る目の根本、基礎となります」と。水墨画のよさがまったくわからず、東京国立博物館でも、出光美術館でも、がむしゃらにさまざまな展覧会を観てきました。静嘉堂文庫美術館では、今から3年前、「筆墨の美―水墨画展」が開催されました。そこで始めて僕は、伝馬遠の国宝「風雨山水図」、因陀羅の国宝「禅機図断簡 智常禅師図」、牧谿の重文「羅漢図」、李士達の重文「秋景山水図」、倪元璐の重文「秋景山水図」、等々を観ることになるわけです。
話はあちこち飛んで支離滅裂になりますが、静嘉堂所蔵の「文殊・普賢菩薩像」は、「釈迦文殊普賢 張思恭筆 三幅」として、京都の東福寺に伝来したもの。現在は、中幅の「釈迦如来及び阿難迦葉図」が米国・クリーブランド美術館に、左右二幅が静嘉堂にあります。大幅に精緻な文様や多彩な色彩、金泥を多用して描かれたこの図は、伊藤若冲が「動植綵絵」(全30幅)とともに相国寺に寄進した「釈迦三尊像」(相国寺蔵)の原画として知られ、若冲も「巧妙無比」と称した習作である、とリーフレットに解説されています。こういう話を聞くと、なぜかうれしくなります。
まず、展示室に入ると目につくのが余崧の「百花図巻」です。華やかな巻物です。余崧は、日本に来たことの確証はないものの、日本に多くの作品が伝存し、江戸後期の史料にも度々登場する画家、だそうです百花図巻鮮やかな色彩で百種類近くの草花や花木が四季をめぐるように描かれています。「百花図巻」は、清朝の宮廷趣味を示している、と解説されています。
よく分からないままに、いただいたリーフレットを頼りにこの文を書いていますが、もう一つありました。「筆墨の美―水墨画展」の時に購入した図録、「筆墨の美―水墨画 静嘉堂の水墨画名品選」です。表紙は鈴木芙蓉の「那智山大瀑雨景図」からとったもので、那智の滝から落下する水しぶきが強風にさらされて霧状になり、上空にあおられる様を描写しています。遅まきながら、この図録をこの際、少しずつでも読み直してみようと思っています。以下、「備忘録」として、画像をできるだけ多く載せておきます。おつき合いください。
宋・元時代の絵画 南宋[1127~1279] 元[1279~1368]
明時代の絵画 明[1368~1644]
清時代の絵画 清[1644~1912]
静嘉堂文庫創設120周年・美術館開館20周年記念
受け継がれる東洋の至宝 PartⅠ
東洋絵画の精華 名品でたどる美の軌跡
静嘉堂文庫美術館には、岩﨑彌之助・小彌太父子二代によって蒐集された、およそ1,000件の絵画コレクションが所蔵されています。中でも、中国絵画・日本絵画は、時代・ジャンルも多岐にわたり、質量ともに国内有数のコレクションと高く評価されています。 特別展「受け継がれる東洋の至宝」PartⅠにあたる本展では、国宝・伝馬遠「風雨山水図」や重文「平治物語絵巻 信西巻」をはじめ、初公開作品を含む、選りすぐりの中国・日本絵画の名品、約70件を展示いたします。 岩﨑彌之助・小彌太父子による東洋文化財の散逸を防ぐとの高い志のもと、この地で守られ、後世に伝えゆく至宝の数々を、この機会にぜひご覧ください。
リーフレット
編集・発行:静嘉堂文庫美術館
静嘉堂の水墨画名品選
2009年10月24日発行
監修・発行:静嘉堂文庫美術館
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