酒井忠康の「舟越桂――森の声を聴く」(求龍堂:2024年7月7日発行)を読みました。
亡くなる4年前の、松涛美術館で開催された「舟越桂 私の中にある泉」が、まとまった最後の大きな展覧会でした。
舟越桂1951年生まれ、酒井忠康1941年生まれ。10歳の違いである。
残念なことに、2024年3月29日肺癌のため舟越桂は死去されました。享年72歳でした。
「彫刻の詩人」舟越桂が思い、
語り合った、言葉と時間が宿る森へ
旅、時、美、夢へ、言葉が光り羽ばたく
遠い彼方を見つめているようなまなざしの人を見かける。美しい目をしている。その美しさは何なのだろうと思いながら、以前はただなんとなく気になるだけだった。(中略)――遠く遠く限りなく遠くにあり、つかもうとしてもなかなかつかみきれないもの、それは自分なのかもしれないと思う。
「言葉の降る森」(角川書店、1998年)から
当初、この本は「対談集」となるべくスタートしましたが、諸般の事情で遅れに遅れたけれども、最終的にこの形で収録をすることになりました。
本書の「対談」は、「彫刻の詩人」と称してもいい舟越桂という人の、貴重な「生の声」を聴く思いがします。ユーモアとウイットに富んだ、しなやかな「言の葉」と言ってもいいでしょう。そう言った意味で、「彫刻の詩人」としての舟越桂という作家を読者が十分に認識し感得していただければ、わたしとしてはこの上ない喜びとしたい。2024年4月
(「あとがきにかえて」より)
目次
第1章 遠くの人をみるために
第2章 彫刻家の内なる声
第3章 語り出す彫刻
第4章 作家と語る
1 旅について
2 時について
3 美について
4 夢について
第5章 森の声を聴く
第6章 玩具からもらった時間
第7章 作家を語る――あるべきところを通る線
あとがきにかえて
舟越桂 略歴
初出一覧、謝辞
酒井忠康:
1941年、北海道に生まれる。慶應義塾大学文学部卒業。1964年、神奈川県立近代美術館に勤務。同美術館館長を経て、2004年より2024年まで世田谷美術館館長。「海の鎖 描かれた維新」(小沢書店)と「開化の浮世絵師 清親」(せりか書房)で注目され、その後、美術評論家としても活動。主な著書に「若林奮 犬になった彫刻家」「鞄に入れた本の話」「芸術の海をゆく人 回想の土方定一」(以上、みすず書房)、「早世の天才画家」(中公新書)、「ダニ・カラヴァン」「ある日の画家 それぞれの時」「彫刻家との対話」「(砂澤ビッキ)」(以上、未知谷)、「覚書 幕末・明治の美術」(岩波現代文庫)、「鍵のない館長の抽斗」「片隅の美術と文学の話」「美術の森の番人たち」(以上、求龍堂)、「展覧会の挨拶」(生活の友社)、「横尾忠則さんへの手紙」(光村図書出版)「余白と照応 李禹煥ノート」(平凡社)などがある。
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