大月康弘の「ヨーロッパ史 拡大と統合の力学」(岩波新書:2024年1月19日第1刷発行)を読みました。僕にはやや荷が重く、読むのに苦労しました。
世界暦と黙示的文学が終末意識を突き動かすとき、ヨーロッパの歴史は大きく躍動した。古代末期に源流をもつ地中海=ヨーロッパの歴史を、人びとを駆動し「近代」をも産み落とした〈力〉の真相とともに探究する。「世界」を拡大し、統合した〈力〉とは何か。ナショナリズムと国民国家を超えた、汎ヨーロッパ世界展望の旅。
目次
はじめに――ヨーロッパ史とは何か
地図 「中世」のヨーロッパ
第1章 大帝を動かす〈力〉――伏流水
一 大帝と呼ばれた皇帝たち――ローマ皇帝の当為
二 ユスティニアヌス――帝国の復興
三 カール――世界統治の理念
四 オットー一世――教会と王国支配
五 黙示的文学の広がり
第2章 終末と救済の時間意識――動力
一 「最後の日は近い」――ヨーロッパを駆動した世界観
二 世界年代記の出現
三 「いま」がもつ意味――キリスト暦の始まり
第3章 ヨーロッパ世界の広がり――外延
一 古代末期から長い「中世」へ――ヨーロッパ史の基層
二 「世界」の広がり――『帝国の統治について』
三 共存と共生――「帝国」の儀礼とその遺産
第4章 近代的思考の誕生――視座
一 レコンキスタと世界暦
二 コンスタンティノープル陥落
三 終わらないヨーロッパ
四 近代社会のオイコノミア
第5章 歴史から現代を見る――俯瞰
一 国家と社会をどう捉えるか
二 《自由な個人》はどこからきたのか――「近代化」論と都市
三 西ヨーロッパ近代社会の淵源――中世都市と「海」
おわりに――統合の基層
あとがき
図版出典一覧
参考文献
関連略年表
索 引
大月康弘:
1962年生まれ.1985年一橋大学経済学部卒業,同大学大学院経済学研究科修了,博士(経済学)
現在―一橋大学大学院経済学研究科教授,同大学理事・副学長
専攻―ビザンツ史,経済史,文明史
著書―『帝国と慈善 ビザンツ』(創文社,2005年.第49回日経・経済図書文化賞),『ヨーロッパ 時空の交差点』(創文社,2015年),リウトプランド『コンスタンティノープル使節記』(訳・解説,知泉書館,2019年),『ユスティニアヌス大帝』(山川出版社,2023年)ほか