TOHOシネマズ日比谷で、ディーリア・オーエンズ原作、オリビア・ニューマン監督の「ザリガニの泣くところ」を観てきました。
過去に読んだ「ザリガニの鳴くところ」の記事はこちら。
そこで、以下のように書きました。
ディーリア・オーエンズ著「ザリガニの鳴くところ」は、小説らしい小説です。500ページもある分厚い本ですが、息をもつかせず、がんがん読ませます。読みごたえがあります。アメリカらしく、裁判の部分が長いのは、少々うんざりでしたが・・・。
ニューマン監督は・・・
全世界で1500万部のベストセラーとなった原作の魅力について、ニューマン監督は「『ザリガニが鳴くところ』は階級についての物語です。文明から距離を置いて湿地で暮らしてきた人々には様々なサバイブの伝説があり、カイアはその歴史の文脈で語られる存在です。定職に就く街の人々には、電気もガスも通らない場所で暮らすカイアは稀有な存在なんです」と語る。 貝や魚など自然の恵みを収穫し、その収入で暮らすカイアへの畏怖。町の人々たちから向けられる眼差しに気づいている彼女は、湿地で静かに暮らしているが、その美貌と存在にやがて2人の男性が引き寄せられていく。
カイアを演じたデイジー・エドガー=ジョーンズは、そんなカイアが何の証拠もない殺人事件の容疑者にされたことについて、「住民は最初からカイアに対してひどい態度をとります。カイアに対する固定観念から抜け出せない彼らにとって、彼女は伝説のような存在になっています。“湿地の娘”なんてレッテルを貼って、町の住民は、急ぎ足で歩く姿をたまに見かけては、彼女のイメージを勝手に作って楽しんでいるんです。だからこそ、殺人事件が起きた時に彼らは自分たちが作り出した“湿地の娘”という生き物が犯人ではないかと噂をします。彼らが真っ先に疑ったのがカイアでした。『彼女がやったに違いない』と。自分たちが作り出した神話を信じ込んでいるんです」と語る。
小説家・柴崎友香は言う。
「ザリガニの鳴くところ」書評 作家・柴崎友香さん 一人の少女のサバイバル、読書で体感する意味|好書好日 (asahi.com)
湿地の奥で一人で生きてきた少女がこの小説の主人公だ。一九五〇年代、まだ学校にも行かない年齢で家族が次々と去り、最後に残っていた暴力をふるう父親も彼女を置き去りにする。「貧乏人」が世間から隠れるように住む湿地の奥で、カイアという呼び名だけで本名すら当初はわからない。母から教わったわずかな家事の知恵を頼りに生き抜く生活は激しく孤独で痛ましく、その絶望が伝わってくる描写が、何度も苦しかった。
・・・人は、他人を、特に自分と関わりの深くない人を安易にラベリングし、都合のいいように片付けてしまう。それだけでなく、周りで起こる出来事や事件にも慣れて鈍くなることで、自分の考えや暮らしを守ろうとしているのかもしれない。つまりは、できごとも、人間のことも、だいたいこんなもんだろうと見くびっている。だからこそ、過酷すぎる境遇を生き抜いてきた一人の女性の、存在そのものに圧倒された。
もちろん原作が素晴らしいのですが、映像も綺麗だし、どこからみても”いい映画”だったと、僕は思いました。
以下、KINENOTEによる。
解説:
全世界で累計1500万部を超える大ベストセラーを映画化したミステリー。1969年、ノースカロライナ州。裕福な家庭の青年の変死体が湿地帯で発見される。容疑者はその湿地帯の中、たった1人で育った少女カイア。事件の裏に隠された衝撃の真実とは? 出演は『ふつうの人々』でゴールデン・グローブ賞候補となったデイジー・エドガー=ジョーンズ、「シャドウ・イン・クラウド」のテイラー・ジョン・スミス。原作にほれ込んだリース・ウィザースプーンが製作を務め、テイラー・スウィフトが楽曲を書き下ろしている。
あらすじ:
1969年、ノースカロライナ州。裕福な家庭で育ち、将来を期待されていた青年の変死体が湿地帯で発見される。容疑者は、“ザリガニが鳴く”と言われるその湿地帯で、たった1人で育った無垢な少女カイア(デイジー・エドガー=ジョーンズ)。彼女は6歳の時に両親に見捨てられ、学校にも通わず、花、草木、魚、鳥など、湿地の自然から生きる術を学び、1人で生き抜いてきたのだった。そんな彼女の世界に迷い込んだ心優しき1人の青年。彼との出会いをきっかけに、すべての歯車が狂い始める……。法廷で徐々に明らかになる想像を絶するカイアの半生。浮かび上がる殺人の動機と、一向に見つからない決定的証拠。事件の裏に隠された真実とは……。
「ザリガニの鳴くところ」YouTube
<湿地の少女>『ザリガニの鳴くところ』特別映像 11月18日(金) 全国の映画館で公開 - YouTube
「ザリガニの鳴くところ」
2020年3月15日初版発行
著者:ディーリア・オーエンズ
訳者:友廣純
発行所:株式会社早川書房
朝日新聞:2022年11月25日