川上弘美の「東京日記6 さよなら、ながいくん。」(平凡社):2021年3月22日初版第1刷発行を読みました。
二つの作品に〇をつけました。第一の〇は、「おいしいごはんが食べられますように」。会社の同僚である「二谷」と「押尾」の二人の語り手が登場するのですが、語られる中心は、二人の同僚の「芦川」。この人物が、ほんとにもう、おそらく読者全員をいらいらさせる存在。・・・わたしは読みながら、芦川と二谷に心を奪われてしまった。押尾も、もちろん好き。周囲のほかの同僚たちも面白い。やがてかれら全員が、簡単にはほぐれない一つの球体をなして、どんどん輝きを放ってくる。これはいったいどういうことなのか?たぶん、この小説の中の人たちは、生きているのです。第二の〇は、「N/A」。・・・この小説の語り手は、言葉の表層だけではなく、そこに本当に存在している人間としての実感を込めて、何かを拒否しているように感じられたのです。
そうです、川上弘美は小説家ですが、芥川賞選考委員なのです。
たまたま読んだ「文学界6月号」で、インタビューを受けていました。題して「川上弘美インタビュー 循環する小説たち」です。川上弘美の初期から最近まで、インタビューに答えていました。そのなかで、今日のために自作を3冊選んでくださいと言われて、選んだのが次の3冊。「真鶴」という長篇と、「大きな鳥にさらわれないよう」という連作短篇による長篇。それから「ぼくの死体をよろしくたのむ」という短篇集す。この3作、僕は読んでました。
話が大きくそれてしまいました。「東京日記」の話でした。
気が付けば、ついに20周年をむかえたカワカミさんの「東京日記」。もはやライフワーク(?)の人気シリーズ、お待たせしました、最新刊です!
始めたばかりのころは「ほんとうのこと」が七割ほどだった「東京日記」ですが、この六巻目に至り、ほぼすべてが「ほんとうのこと」になりました。といっても、「ほんとうのこと」とは、いったい何だ、という面もあります。虚実皮膜、というのではなく、わたしは「ほんとうのこと」として書いているのに、なぜだか「ほんとうのこと」からはどんどん離れていってしまう・・・というような。
(「あとがあき」より)
で、「東京日記」の1~5です。ちゃんと読んで、ブログに書いてました。
川上弘美の「東京日記 1+2 卵一個ぶんのお祝い。/ほかに踊りを知らない。」を読んだ!
川上 弘美:
(かわかみ ひろみ、旧姓・山田、1958年4月1日 - )は、日本の小説家。東京都生まれ。大学在学中よりSF雑誌に短編を寄稿、編集にもたずさわる。高校の生物科教員などを経て、1994年、短編「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞。1996年「蛇を踏む」で芥川賞受賞。
幻想的な世界と日常が織り交ざった描写を得意とする。作品のおりなす世界観は「空気感」と呼ばれ、内田百閒の影響を受けた独特のものである。その他の主な作品に『溺レる』、『センセイの鞄』、『真鶴』など。
俳人でもあり、小澤實主宰の『澤』に投句しているほか、長嶋有らとともに句誌『恒信風』で句作活動をしている。 2019年、紫綬褒章受章。
(「ウィキペデイア」による)
過去の関連記事:
川上弘美の「パスタマシーンの幽霊」を読んだ!
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川上弘美の「風花」を読んだ!
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川上弘美の「溺レる」を読んだ!
川上弘美の「古道具 中野商店」を読む!
センセイの鞄は川上弘美の最高傑作だ!
ニシノユキヒコの恋と冒険
川上弘美の「光ってみえるもの、あれは」をまた読んだ!
川上弘美の「龍宮」を読む!
「わたしの好きな季語」
著者:川上弘美
発売日:2020年11月20日
(売れてるらしい?)
96の季語から広がる、懐かしくて不思議で、ときに切ない俳句的日常。
俳人でもある著者による初めての「季語」にまつわるエッセー集。散歩道で出会った椿事、庭木に集う鳥や虫の生態、旬の食材でやる晩酌の楽しみ、ほろ苦い人づきあいの思い出、ちょっとホラーな幻想的体験など、色彩豊かな川上弘美ワールドを満喫しながら、季語の奥深さを体感できる96篇。名句の紹介も。
「蛙の目借時」「小鳥網」「牛祭」「木の葉髪」「東コート」。それまで見たことも聞いたこともなかった奇妙な言葉が歳時記には載っていて、まるで宝箱を掘り出したトレジャーハンターの気分になったものでした。(中略)それまで、ガラスケースの中のアンティークのように眺めてきたいくつもの季語を、自分の俳句にはじめて使ってみた時の気持ちは、今でもよく覚えています。百年も二百年も前につくられた繊細な細工の首飾りを、そっと自分の首にかけてみたような、どきどきする心地でした(本文より)。
「大好きな本 川上弘美[書評集]」
文春文庫
2010年9月10日第1刷
2018年2月25日第2刷
著者:川上弘美
発行所:株式会社文藝春秋
(いつもそばにおいて辞書代わりに拾い読みしています)