津野海太郎の「最後の読書」(新潮文庫:令和3(2021)年9月1日発行)を読みました。
本の帯には、以下のようにあります。
あと何冊読める?
読書人生最終章の厄介とたのしみ。
読売文学賞受賞
恥ずかしながら、津野海太郎の著作を読むのは初めてです。編集者として、そのお名前は昔からよく存じておりました。なんで今まで読んでこなかったんだろうと、忸怩たる思いでいっぱいです。それにしても目は弱り、記憶は衰え、まさに「老人日記」ですね。これも仕方がないことですが…。
「古典が読めない!」や「現代語訳を軽く見るなかれ」では、津野海太郎が、おおいに伊藤比呂美を評価しているのには、驚きました。たまたま読んでいるものに通じていたので…。
ラストの「貧乏からさす光」や「柵をこえる」では、多くを松山巌(藝大建築出身)の「須賀敦子の方へ」の年譜に頼ってはいますが、須賀敦子(生家は空気調和・衛生設備事業の須賀工業)の福祉活動に焦点を当てています。
「柵をこえる」ラストからの引用
(ピエトロ・ジェルミ監督の「鉄道員」にふれながら)
1975年の末に「エマウスの家」のリーダー役をしりぞき、大学教師と物書きの暮らしに移ってゆく。カトリック入信と聖心での奉仕活動にはじまる彼女の宗教的な活動化時代の終わり。そのあと「ミラノ霧の風景」にはじまる日本での8年間の短い文筆生活をへて、1998年に69歳で没した 。もしいまの私の年齢まで生きることができたら、おそらく大きく完結したであろう「世界文学」の構想をあとにのこして。
実は石山修武(現早稲田大学名誉教授)が、津野さんのご自宅を設計したことでお名前は知っていましたが、ここでは触れません。
目はよわり、記憶はおとろえ、蔵書は家を圧迫する。でも実は、老人読書はわるいことばかりではないよ――。鶴見俊輔、幸田文、須賀敦子・・・。長い歳月をたずさえて読む本は、豊かで新鮮なよろこびに満ちている。親しい仲間や敬愛する先達との別れを経験しながら、それでも本と出会い続けよう。本を読み、つくり、書いてきた読書人が、その楽しみを軽やかに綴る現状報告。読売文学賞受賞作!
目次
1 読みながら消えてゆく
2 わたしはもうじき読めなくなる
3 子供百科のテーマパーク
4 目のよわり
5 記憶力のおとろえを笑う
6 本を読む天皇夫妻と私
7 蔵書との別れ
8 手紙と映画館が消えたのちに
9 それは「歴史上の人物」ですか?
10 古典が読めない!
11 現代語訳を軽く見るなかれ
12 八十歳寸前の読書日記
13 いつしか傘寿の読書日記
14 少年読書回想
15 でも硬い本はもう読めないよ
16 貧乏映画からさす光
17 柵をこえる
あとがき
解説 鈴木敏夫
下記は、次に(たぶん)読む購入済みの津野海太郎の本
「百歳までの読書術」
2015年7月24日初版第1刷発行
2015年9月10日初版第2刷発行
著者:津野海太郎
発行所:株式会社本の雑誌社
「読書と日本人」
岩波新書
2016年10月20日第1刷発行
著者:津野海太郎
発行所:株式会社岩波書店